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小麦価格の高騰を背景に見直される、米食の魅力


ウクライナ情勢や円安の影響で、小麦の価格が高騰しています。そうした背景から、小麦の代わりとして米に熱い視線が注がれています。日本人にとって、米はもっともなじみのある主食ですが、米の消費量は減少傾向にあります。米食には健康面のメリットも多くあるため、今後米食が見直され、消費量が増えていくかもしれません。今回は、エビデンスが明らかにする米食の健康価値についてご紹介します。

米を主食にする食生活は健康的って、本当?

米を中心に一汁三菜を基本とする和食は、世界から注目されています。その理由の1つが、栄養バランスに優れた食事スタイルである点です。主食が米だからこそ、魚や味噌、納豆などの健康的な食品との組み合わせが成り立ちます。日本人278人を対象とした調査によると、米を中心とした伝統的な和食を摂っている人では生活の質が高く、和食は心身の健康に役立つ可能性があると報告されています*1。

また、アメリカの研究でも、米をよく食べる人では食物繊維や葉酸、マグネシウム、鉄、カリウムといった栄養素の摂取量が多い傾向が認められており、米食が推奨されています*2。食事スタイルを和食にシフトすれば動物性油脂の摂取も抑えられるため、生活習慣病の予防にも有用です。ただ、和食では食塩摂取量が増えてしまいがちなので、その点は気を付ける必要があります。

睡眠の質や認知機能に良い影響をもたらす可能性も

最近の研究から、米食は精神・神経系の健康にも役立つ可能性があることが分かってきています。日本人1,848人を対象に、主食の種類別(米、パン、麺)の摂取量と睡眠の質との関係を調べた研究によると、米の摂取量が多いほど睡眠の質が高いことが示されています*3。

また、主食に米を食べたグループと米以外を食べたグループで睡眠の質を比べた別の研究でも、米食グループで睡眠の質が改善したと報告されています*4。米食グループでは、血液中の酸化ストレスレベルが低いことが明らかにされており、これが睡眠の質の改善に関係しているかもしれません。

酸化ストレスはアルツハイマー型認知症の発症にも関連しており、食事から抗酸化物質を摂ることが予防につながると考えられています*5。特に、玄米には認知機能の改善に役立つ可能性があるとされるフェルラ酸が豊富に含まれていることから*6、認知機能への影響に期待するなら白米より玄米を選ぶほうが良いと言えそうです。なお、フェルラ酸に関しては「認知症予防効果が期待される「フェルラ酸」とは?」で詳しく解説しています。

便秘を解消したいなら、麦ごはんがおすすめ!

あまり知られていませんが、米には食物繊維も含まれており、日本人にとって米は主要な食物繊維摂取源です。ライフスタイルと便秘の関係を調べた研究によると、食物繊維摂取源である米を多く食べている人では便秘になりにくいことが分かっています*7。

また、米には食物繊維と同じ作用を発揮するデンプン「レジスタントスターチ(難消化性デンプン)」も含まれています。レジスタントスターチには、便秘を解消したり、腸内環境を改善したりする効果があると言われており、この点からも米は便秘対策にもってこいの食品と言えます*8。レジスタントスターチについて詳しくは、「ダイエットの味方!主食に含まれるレジスタントスターチ」をご覧ください。

食物繊維の摂取量をより増やしたいなら、白米ごはんを麦ごはんにチェンジするのがおすすめ。大麦は白米と比べて炊飯後のカサ増し度合(炊き増えする割合)が高いので、麦ごはんにすれば食費の節約にもなります。また、麦ごはんは白米ごはんと比べて満腹感が高く、食べ過ぎを抑えられるというメリットも*9。健康的な米食を目指すなら麦ごはんを選ぶのが良いでしょう。

*1 Koga M, et al.: PLoS One 2017; 12: e0185816.
*2 Nicklas T, et al.: Food and Nutrition Sciences 2014; 5: 525-532.
*3 Yoneyama S, et al.: PLoS One 2014; 9: e105198.
*4 Koga M, et al.: Nutrients 2020; 12: 2926.
*5 McGrattan AM, et al.: Curr Nutr Rep 2019; 8: 53–65.
*6 西澤千恵子ら: 日本食品科学工学会誌 1998; 45: 499-503.
*7 Nakaji S, et al.: Eur J Nutr 2002; 41: 244-248.
*8 後藤勝: 日本家政学会誌 2014; 65: 197-202.
*9 Aoe S, et al.: Plant Foods Hum Nutr 2014; 69: 325–330.