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極端な糖質制限は逆効果?もち麦で健康的にダイエット


だれもがよく知るダイエット法の1つになった糖質制限ダイエット。ブームとともに、「糖質は太る原因になる」「糖質さえカットすれば痩せる」という誤った考え方が広がり、健康を損なうような方法で糖質制限ダイエットをしてしまう人も出てきています。今回は、糖質の役割や糖質制限の落とし穴、糖質の適切な摂り方について解説します。

そもそも、糖質にはどんな役割があるの?

糖質制限ブームによって、「糖質=悪者」という考え方が広がってしまっていますが、そもそも糖質はからだに必要な栄養素です。生きるためのエネルギー源になる三大栄養素に、炭水化物、たんぱく質、脂質がありますが、糖質は炭水化物の一部であり、重要なエネルギー源です。

炭水化物と糖質は混同されがちですが、炭水化物にはエネルギー源になる糖質だけでなく、消化・吸収されない食物繊維も含まれます。

食事で糖質を摂ると、小腸から吸収されて血糖値が上昇します。血糖値の上昇に応答してインスリンというホルモンが分泌され、糖が全身の細胞に取り込まれてエネルギー源として使われたり、グリコーゲンという貯蔵型の糖として肝臓や筋肉に蓄えられたりします。グリコーゲンとして蓄えられる量には限界があるので、それを超えた分はインスリンの働きで中性脂肪に変えられ、脂肪組織に蓄えられます。つまり、糖質を摂りすぎるとからだに脂肪がつくのです。

糖質の摂りすぎに気を付ければ血糖値が上がりにくくなり、インスリンの分泌も抑えられるので、余分な脂肪がつきにくくなります。これが、糖質制限にダイエット効果があるとされる仕組みです*1。

糖質制限の意外な落とし穴

「糖質を摂らなければやせる」という誤った認識で糖質の摂取量を減らしすぎると、さまざまな弊害が起こることがあります。

たとえば、糖質を摂らない代わりにたんぱく質や脂質をむやみに摂るようなダイエットをしていると、知らずしらずのうちにエネルギー過多になり、やせるどころか太ってしまう可能性があります。また、糖質だけに着目して穀類やいも・豆類をカットしてしまうと、これらの食品に含まれる食物繊維やビタミンなどの栄養素を摂る機会まで失ってしまいます。

1日当たりの糖質摂取量を10~20g前後に制限するような極端な糖質制限をした場合、一時的に体重は減少するものの、感染症にかかりやすくなったり、栄養失調になったりするおそれがあります。長く続けると骨粗鬆症や心筋症などの病気につながることもあるため*2、極端な糖質制限は避けるべきです。

もち麦で糖質を上手に摂るダイエットを!

脳や神経組織、赤血球などのブドウ糖をエネルギー源として利用する組織を維持するためには、最低でも1日100gは糖質が必要だと言われています*3。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、炭水化物(特に糖質)はエネルギー源として重要な役割を担っていることから、1日に摂取するエネルギーの50~65%を炭水化物から摂るという目標量を定めています*3。

1日に必要とされるエネルギー量は、個人の年齢や性別、身体活動量などによって変わってきますが、身体活動レベルが普通の30~40代の場合、男性なら2,700kcal、女性なら2,050kcalが必要です*3。この場合、炭水化物から摂るエネルギーの目標量は男性で約1,620kcal、女性で約1,230kcalになります。

炭水化物をむやみにカットするのではなく、まずは適切な量を知り、からだに必要な量をきちんと摂ることが大切です。その上で、太りにくい食事を実践するなら、主食に食後の血糖値が上がりにくい炭水化物を選ぶことがポイント。もち麦などの大麦には糖や脂質の吸収をおだやかにするβ-グルカンという食物繊維が多く含まれており、大麦を混ぜた麦ごはんを主食にすると白米よりも食後の血糖値が上がりにくいことが確かめられています*4。

また、朝食に麦ごはんを食べると、昼食後の血糖上昇までおだやかになる「セカンドミール効果」が得られることも分かっています*4。大麦はゆっくり消化されるので、満腹感が持続するのもダイエットには嬉しいポイント。実際に、朝食に麦ごはんを食べた場合では白米を食べた場合よりも食べすぎが抑えられ、1日の摂取エネルギー量が少なくなることが報告されています*5。ダイエットを健康的に行うなら、朝食に麦ごはんを取り入れた「食べるダイエット」をしてみてはいかがでしょう?

健康的なダイエットに役立つ大麦の効果は「はくばく研究員が解説する大麦とその効用」で解説しているので、こちらもあわせてご覧ください。

*1 Ebbeling CB, et al.: BMJ 2018; 363: k4583.
*2 藤谷朝実: 日本調理科学会誌 2020; 53: 365-367.
*3 「日本人の食事摂取基準」策定検討会: 日本人の食事摂取基準(2020年版), 2019.
*4 福原育夫ら: Jpn Pharmacol Ther 2013; 41: 789-795.
*5 Aoe S, et al.: Plant Foods Hum Nutr 2014; 69: 325–330.