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オートミールの原料であるオーツ麦。その健康効果とは?


食物繊維が豊富で健康にいいとして、人気が高まっているオートミール。オートミールの原料となっているのが、オーツ麦(日本語名:えん麦)です。日本ではあまりなじみのない穀物ですが、ヨーロッパ諸国やアメリカでは広く食されており、その健康効果に関する研究も活発に行われています。今回は、オーツ麦の栄養特性や健康効果について詳しく解説します。

オーツ麦ってどんな穀物?

オーツ麦は、ロシアやアメリカ、カナダ、ヨーロッパ諸国などで栽培されている穀物です。主に動物の飼料に利用されており、食用として食卓に広がり始めたのは19世紀になってからと言われています*1。健康志向の高まりを背景に、近年は食用としての消費が広がってきているものの、まだまだ少ないのが現状です。

オーツ麦には、小麦に含まれるグルテンというたんぱく質が含まれていません。そのため、グルテンが原因で腸に炎症が起こるセリアック病の患者さんにとって、オーツ麦は安全な穀物だとされています*2。ただ、製造過程で小麦が混入してしまうこともあるため、選ぶ際は製品のグルテンフリー表示やアレルゲン表示などを確認することが大切です。

グルテンにはパン作りに必要な弾力や粘りを出す性質がありますが、オーツ麦にはグルテンがないことから、パンの原料には向いていません。オーツ麦の食べ方としては、熱処理したオーツ麦を平たくしてフレーク状に加工したオートミールがもっとも一般的です*3。オートミールに玄米やライ麦などを混ぜ、砂糖や油を加えて焼き上げたグラノーラは、日本でも朝食として摂る人が増えています。

オーツ麦の悪玉コレステロール低下作用

オーツ麦は健康にいいことが知られている穀物ですが、特に血液中のLDL(悪玉)コレステロールを低下させる作用について多くの研究報告があります。この悪玉コレステロール低下作用に関与していると言われているのが、オーツ麦に含まれる水溶性食物繊維のβ-グルカンです*4。

オーツ麦β-グルカンには腸内の消化物の粘度を高める性質があり、それによって糖質や脂質の吸収が遅くなることで、血中の悪玉コレステロール値が低下すると言われています*5。

オーツ麦の悪玉コレステロール低下作用は、健康強調表示をすることがアメリカ食品医薬品局や欧州食品安全機関からも認められており、効果を得るには1日当たり少なくとも3gのβ-グルカンを摂るべきとされています*6。コレステロールが高めの日本人を対象とした研究では、オートミール60g(β-グルカン:2.1g)を摂取すると、摂取期間中は血中の総コレステロール値が低下するという結果が報告されています*7。

なお、β-グルカンは大麦にも豊富に含まれており、オーツ麦β-グルカンと同じく悪玉コレステロール低下作用があることが分かっています。詳しくは「大麦とその効用」をご覧ください。

オートミールは肌にもいい!?

オーツ麦にはβ-グルカンのほかにも健康に有用な成分が豊富に含まれています。特に注目されているのが、オーツ麦特有のポリフェノールである「アベナンスラミド」です。

アベナンスラミドの効果を報告した研究は数多くあり、炎症やかゆみを和らげる作用があることが分かってきています*8。実際に、オートミールは皮膚のかゆみを軽減するための局所療法として何世紀にもわたって使われてきました。現在では、シャンプーやシェービングジェル、保湿クリームなどオーツ麦成分を使用した製品は数多く市販されており、日本でも入手することができます。

抗酸化作用や抗炎症作用を持つアベナンスラミドは、動脈硬化の予防にも役立つ可能性が示されています*8。アベナンスラミドの大部分はオーツ麦の外皮(オートブラン)に存在しており*4、外皮にはβ-グルカンも豊富に含まれているので、オーツ麦の健康効果を最大限に取り入れるには外皮までまるごと食べられるオートミールがおすすめです。

最近ではオーツ麦の新たな楽しみ方として、オーツミルクも広がりつつあります。オーツミルクについては「豆乳だけじゃない!いま注目の植物性ミルク」で紹介していますので、こちらも合わせてご覧ください。

*1 Gangopadhyay N, et al.: Molecules 2015; 20: 10884–10909.
*2 Gilissen LJWJ, et al.: Med Sci (Basel) 2016; 4: 21.
*3 Rasane P, et al.: J Food Sci Technol 2015; 52: 662–675.
*4 Grundy MML, et al.: Food Funct 2018; 9: 1328–1343.
*5 Wang Q, et al.: Br J Nutr 2014; 112: S4-S13.
*6 Whitehead A, et al.: Am J Clin Nutr 2014; 100: 1413-1421.
*7 青江誠一郎ら: 栄養学雑誌 2006; 64: 77-86.
*8 Perrelli A, et al.: Oxid Med Cell Longev 2018; 2018: 6015351.