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水溶性食物繊維と不溶性食物繊維は、どう違う?


10月1日を数字で表した1001は“せんい(ち)”と読めることから、不足しがちな食物繊維の摂取を向上させるきっかけとするために、10月1日は食物繊維の日とされています。食物繊維が健康に役立つ成分であることは広く知られていますが、食物繊維の具体的な作用はあまり認知されていないかもしれません。そこで今回は、食物繊維の分類や機能について詳しく解説します。

そもそも、食物繊維って何?

人のからだをつくり、エネルギー源となる炭水化物、脂質、たんぱく質は三大栄養素と呼ばれています。ただ、炭水化物の中には人の消化酵素で消化できず、ほとんどエネルギー源にならない成分もあります。それが、食物繊維です。

炭水化物のうち、人の消化酵素で消化できるものを「糖質」、消化できないものを「食物繊維」と分類します。糖質は1gあたり約4kcalのエネルギーを生み出し、脳や神経組織、赤血球などのブドウ糖(グルコース)しかエネルギー源として利用できない組織にとってとても重要な栄養素です*1。一方、食物繊維は腸内細菌によって発酵・分解される際にエネルギーを生み出しますが、その量はごくわずかです。そのため、三大栄養素で炭水化物と言う場合は、食物繊維を含まず糖質のみを指すと考えてよいとされています。

以前までは、エネルギー源になりえない食物繊維は生理的意義の低い非栄養素とされてきました。しかし、様々な研究から、食物繊維の摂取量が多いほど脳卒中や2型糖尿病、がんなどの病気のリスクが低いことが明らかになり、今では食物繊維は健康維持に重要な役割を果たす栄養素と位置付けられています。

「水溶性」と「不溶性」、それぞれの食物繊維のはたらき

食物繊維はその性質によって、水に溶ける「水溶性食物繊維」と水に溶けない「不溶性食物繊維」に分けられます。いずれも消化吸収されずに大腸まで到達する点は共通していますが、その生理作用は大きく異なります。

水溶性食物繊維は水に溶けてゲル化し、糖の消化吸収スピードを遅くして急激な血糖上昇を抑えたり、不要なコレステロールやナトリウムの吸収を阻害したりする作用を持ちます。また、ゲル化することで便の水分量を高め、便のかさを増やすことで便通をよくします。

一方、不溶性食物繊維は大腸の粘膜を刺激して水分や粘液の分泌を促し、便のかさを増やしたり、便をやわらかくしたりする作用があります*2。不溶性食物繊維は便秘解消に役立つ成分ではありますが、過敏性腸症候群(IBS)の人ではかえって症状が悪化するおそれがあるため*3、便秘解消のために食物繊維を摂る場合は自分に合うか様子を見ることが大切です。

腸の健康をサポートする発酵性食物繊維に注目!

水に溶けるかどうかだけでなく、腸内細菌によって発酵されやすいかどうかという観点から食物繊維を分類する考え方もあり、近年注目を集めています。腸内細菌によって発酵されやすい食物繊維は「発酵性食物繊維」と呼ばれており、β-グルカンやペクチンなどの水溶性食物繊維、ヘミセルロースなどの一部の不溶性食物繊維、レジスタントスターチ(難消化性デンプン)などがあります。

腸内に棲む有用菌が発酵性食物繊維を発酵・分解すると短鎖脂肪酸という酸が作られますが、短鎖脂肪酸には有害菌の増殖を抑えたり、腸のバリア機能を高めたりする作用があります。また、発酵性食物繊維が肥満予防に役立つ可能性を示唆する報告もあり、マウスを用いた研究によると、大麦に含まれるβ-グルカンのうち、発酵性の高い低分子量のβ-グルカンを摂取すると短鎖脂肪酸の産生量が増加し、糖や脂質の代謝が改善する可能性があるとされています*4。

このように、食物繊維の機能は多岐にわたるため、種類によらずバランスよく摂取することが大切です。厚生労働省の定める「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人(18~64歳)が1日に摂取すべき食物繊維の目標量は男性で21g以上、女性で18g以上とされています*1。国民健康・栄養調査によると、30代の1日の食物繊維摂取量は男性18.3g、女性15.9gとなっており*5、現代人の多くは食物繊維が不足気味だと考えられます。

目標量を達成するには、普段から意識的に食物繊維が豊富な食品を摂ることが大切です。大麦は水溶性と不溶性、どちらの食物繊維も豊富に含んでおり、足りない食物繊維を補うのにぴったり。おいしい大麦レシピ「おいしい大麦レシピ」では大麦を取り入れた様々なレシピを紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

*1 「日本人の食事摂取基準」策定検討会: 日本人の食事摂取基準(2020年版), 2019.
*2 McRorie JW, et al.: J Acad Nutr Diet 2017; 117: 251-264.
*3 Bijkerk CJ, et al.: BMJ 2009; 339: b3154.
*4 Aoe S, et al.: Nutrients 2020; 13: 130.
*5 厚生労働省: 令和元年国民健康・栄養調査報告, 2020.