ホーム食べるからだメンテナンス/健康のために賢く摂りたい「食物繊維」

内側から整える食生活のすすめ

食べるからだメンテナンス

健康のために賢く摂りたい「食物繊維」


近年、注目されている「食物繊維」。かつて食物繊維は、お通じがよくなる効果はあるけれど、エネルギーになったり体をつくったりするわけではないことから、それほど重視されていなませんでした。それが、現在では健康維持に不可欠なものであることがわかり、炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルの5大栄養素に次ぐ「第6の栄養素」などといわれるようにもなりました。

病気を予防してくれる食物繊維

「食物繊維」とは、いったいどんなものなのでしょうか。一般的には、人間の消化酵素では消化されない食物中の成分を総称して「食物繊維」と呼び、水に溶ける水溶性と、溶けない不溶性とに大別できます。「繊維」という名前から、細い糸のような形状をイメージするかもしれませんが、それだけでなくハチの巣状やヘチマ状のようなものもあります。また、ネバネバぬるぬるしたものやサラリとした状態のものなどがあり、多種多様です。体内では消化されないため、そのまま大腸まで達して排出されますが、その過程で健康に役立つ働きをしてくれます(表参照)。こうした食物繊維の働きには、腸の病気や糖尿病・脂質異常症・肥満症などの代謝性疾患を予防する効果があることが認められています。また、欧米では1日あたり24g以上の摂取で、心筋梗塞のリスクが低下するという研究報告もあります。

■食物繊維の種類と働き


不溶性食物繊維水溶性食物繊維
主な働き
・腸内で水分を吸収して便のかさを増し、便秘の予防、解消
・排便をスムーズにすることで有害物質を体外へ素早く排出
主な働き
・腸内の余分なコレステロールを吸着し、排出
・糖の吸収を抑えて急激な血糖値上昇を抑制
・腸内細菌のエサになり腸内環境を整える
食物繊維の種類(一部)と、それを含む主な食品
セルロース(大豆、ごぼうなど)、リグニン(ココア、豆類)、キチン・キトサン(カニなどの殻など)
食物繊維の種類(一部)と、それを含む主な食品
β-グルカン(大麦など)、ペクチン(リンゴ、キャベツなど)、グルコマンナン(こんにゃく)、アルギン酸(わかめや昆布など)

糖尿病リスクを減らす穀物由来の食物繊維

健康維持に欠かせない食物繊維ですが、現代の日本人には不足している栄養素です。厚生労働省は、成人男性なら1日20g以上、女性は18g以上を摂取目標としています 。1955年には1日20g以上の食物繊維を摂取していましたが、現在では1日に14g程度しか摂取できていません。減少の要因を見てみると、穀物からの摂取量が大きく減っていることがわかります。これは、食の欧米化により、麦ごはんや玄米など食物繊維の多い穀物を食べる機会が減り、外皮を削って精製した白米や白パンなどを食べるようになったことが要因と考えられます。

  引用:麦ラボ「穀物からの食物繊維摂取量がぐんと減っている」より

近年、ごはんやパン・麺類など、糖質の多い食事を減らす糖質制限ダイエットが人気ですが、穀物には糖質だけでなく食物繊維も含まれているので、あまりに極端な糖質制限は好ましくありません。また、「穀類由来の食物繊維の摂取量が多いと糖尿病の発症リスクは低くなるが、果物や野菜の食物繊維では関連が認められなかった」という調査報告があり、穀物由来の食物繊維の重要性もわかってきました。麦ごはんや玄米、全粒粉パンなどは食物繊維が多く、同量を食べるなら白米や精製小麦のパンよりも多くの食物繊維を摂ることができます。何から食物繊維を摂るのかも考えながら、目標量の食物繊維がを摂るように食生活を整えたいものです。