和三盆の産地・香川県の風土が活きた大麦の郷土菓子「おちらしあめ」

和菓子作りに古くから用いられてきた「麦こがし」をご存じですか? 原料は大麦で、これらを使った郷土のお菓子が日本各地にたくさんあります。今回はその中でも、香川県の風土と文化が色濃く表れた伝統菓子「おちらしあめ」をピックアップします。
現代だけじゃない! 昔から人気者だった大麦スイーツ
近年、ヘルシースイーツの代表格として人気となっている大麦を使ったお菓子。実は大麦は古くから、お菓子の材料として日本各地で親しまれてきました。その多くは、大麦を香ばしく焙煎して粉状に挽いた「麦こがし」を使ったもの。麦こがしは地域によって呼び名が変わるので、「はったい粉」「おちらし」「香煎(こうせん)」などの名前でご存じの方も多いかもしれません。
麦こがしを使ったお菓子として比較的知られているのが、群馬県館林市の「麦落雁(むぎらくがん)」です。麦こがしと砂糖を合わせて固めたもので、江戸時代には将軍家に献上されていました。他にも、麦こがしに水や砂糖を加えて作る団子や餅、香ばしい麦こがしと相性の良い麦芽糖などとともに練った飴などが全国各地に存在し、その土地土地で現代に受け継がれています。
和三盆の産地・香川県ならではの「ごみ砂糖」の「おちらしあめ」って?
中でも、香川県の郷土菓子「おちらしあめ」は、土地の歴史や文化・特徴が色濃く表れた大麦のお菓子といえるでしょう。「おちらし」とは麦こがしの別名※。昔から大麦の栽培に適していた香川県では米の裏作として麦作りが盛んに行われていて、麦ごはんはもちろん、おちらしに加工してそのまま食べたり湯に溶かして飲んだりする習慣もあったと伝えられています。
また香川県といえば、和三盆の名産地。県内有数のサトウキビの産地・東讃(とうさん)地域では、和三盆を作る前の糖の汁(サトウキビを搾った汁)を飴色になるまで煮詰めた「ごみ砂糖」という粗糖が古くから作られており、白くなる前の砂糖「白下糖(しろしたとう」の名でも親しまれてきました。
この香川県の風土が生んだ2つの特産品、おちらしとごみ砂糖を合わせて作るが「おちらしあめ」です。大麦の収穫時期を迎える初夏にはどこの家庭にも常備されていて、子どものおやつとして食されていたとか。ごみ砂糖特有のコク深い甘みが炒った大麦の香ばしさによく合い、好まれたのでしょう。
全国には他にも、黒糖やハチミツを使って麦こがしの飴を作る地域もあり、シンプルな作り方ではありますが、風土や歴史が現れている奥深いお菓子といえそうです。皆さんもぜひ、ゆかりのある地域の麦こがしの飴を探してみてはいかがでしょうか?
※おちらし・・・大麦ともち米を10:3の割合で混ぜて炒り粉に挽いたもの