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花粉の季節に気になる肌荒れ。食事でできる改善策とは?


肌のバリア機能が低下していると、外からやってくる花粉や刺激物質によって肌荒れが起こることがあります。こうした肌荒れを防ぐには、日頃から保湿剤を使ってスキンケアをすることが大切ですが、食事の工夫でも肌荒れ対策ができることが分かってきています。今回は、肌のバリア機能と食品成分の関係、肌荒れ対策に役立つ食事について解説します。

花粉の季節に肌荒れするのは、なぜ?

花粉症というと、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどがよく見られる症状ですが、中には肌荒れの症状が現れることもあります。スギ花粉が飛散する春先や、ブタクサ、ヨモギの花粉が飛散する秋に肌の赤みやかゆみ、ヒリヒリ感などの症状が現れた場合、その原因は花粉にあるかもしれません。

花粉のようなアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)や刺激物質が接触することで肌に生じる炎症を、接触皮膚炎といいます*1。接触皮膚炎は、肌のバリア機能が低下することでアレルゲンや刺激物質が肌の内側に侵入し、細胞を刺激することで生じます。

肌の一番外側にはバリアの役割を果たす角層という薄い層があり、肌が正常に保たれていれば、外からやってくるアレルゲンや刺激物質が角層を通過することはありません。しかし、肌が乾燥すると角層の構造が乱れてバリア機能が低下し、アレルゲンや刺激物質が角層を通り抜けてしまいます。バリア機能の低下を改善するには、保湿剤で肌に潤いを与え、乾燥した肌を正常な状態に近づけることが大切です。

肌のバリア機能を高めるのに役立つ食品とは

肌の角層には、水分の蒸発を防ぎ、潤いをキープするための成分が存在します。例えば、細胞と細胞の間にあるセラミドや脂肪酸などの脂質には、水分をサンドイッチ状に挟み込んで逃さないようにするはたらきがあります。また、細胞内に存在するアミノ酸や尿素には、水分を保持するはたらきがあります。

これらの保湿成分の中には食品に含まれているものもあり、食事から摂取することで肌のバリア機能を改善させる可能性があることが分かってきています。

オメガ3系脂肪酸は肌のバリア機能にとって重要な成分ですが、オメガ3系脂肪酸の1つであるアルファリノレン酸を豊富に含むアマニ油を摂取すると、肌の水分蒸発量が減り、水分保持力が改善することが女性を対象とした複数の研究で報告されています*2,3。また、セラミドやオメガ6系脂肪酸のガンマリノレン酸も、食事から摂取することで肌のバリア機能が改善する可能性が示されています*4,5。

肌を健康に保つには、毎日の食事でオメガ3系脂肪酸やオメガ6系脂肪酸を摂ることが大切です。1日当たりの摂取量の目安(30~40代の場合)は、オメガ3系脂肪酸は男性:2.0g、女性:1.6g、オメガ6系脂肪酸は男性:10g、女性:8gとされています*6。オメガ3系脂肪酸はアマニ油のほかにえごま油や青魚に、オメガ6系脂肪酸はコーン油や大豆油、グレープシードオイルなどに含まれており、これらの食品を意識して摂ることが肌の健康につながります。

腸内環境を整えることが、肌荒れ改善に!

便秘がちな人では肌荒れに悩まされることが多いように、肌の状態は腸内環境と密接に関係していることが知られています。慢性的な便秘と乾燥肌に悩む女性を対象とした研究によると、乳酸菌発酵で作ったヨーグルトを1日2回、4週間続けて摂ることで便秘と肌の乾燥が改善することが報告されており、腸内環境の改善が肌状態の改善につながる可能性があります*7。

また別の研究では、ビフィズス菌を含む食品とガラクトオリゴ糖(腸内の有用菌のエサになる成分)を一緒に摂ると、肌の角層の水分保持力が上昇することも示されています*8。肌荒れ対策としてヨーグルトや味噌、納豆などの有用菌を含む発酵食品を摂るなら、有用菌のエサになる水溶性食物繊維やオリゴ糖もあわせて摂るのが効果的と言えそうです。

大麦にはβ-グルカンと呼ばれる水溶性食物繊維が豊富に含まれており、いつものごはんを麦ごはんに変えるだけで、手軽に水溶性食物繊維を摂ることができます。「大麦の効用」で紹介しているとおり、大麦には便秘解消効果があることが知られており、腸内環境を整えるのにぴったり。「おいしい大麦レシピ」では、発酵食品と大麦を組み合わせたレシピも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

*1 日本皮膚科学会接触皮膚炎診療ガイドライン改定委員会.: 日本皮膚科学会雑誌 2020; 130: 523-567.
*2 Spirt SD, et al.: Br J Nutr 2009; 101: 440-445.
*3 Neukam K, et al.: Skin Pharmacol Physiol 2011; 24: 67-74.
*4 Parke MA, et al.: Dermatol Pract Concept 2021; 11: e2021132.
*5 菅原達也: 日本栄養・食糧学会誌 2013; 66: 177-183.
*6 厚生労働省: 日本人の食事摂取基準(2020年版).
*7 伊澤佳久平ら: 腸内細菌学雑誌 2008; 22: 1-5.
*8 Mori N, et al.: Biosci Microbiota Food Health 2016; 35: 105-112.