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花粉症対策は腸内フローラを整えるところから


日本人の約3割がかかっていると言われる、花粉症。毎年スギ花粉が飛散する時期になると、多くの人がくしゃみや鼻水、目のかゆみといった症状に悩まされています。近年、花粉症対策の1つとしてヨーグルトなどの発酵食品が注目されていますが、なぜそうした効果が期待できるのでしょうか?今回は、花粉症と腸内フローラの関係に着目し、食事でできる花粉症対策について紹介します。

花粉症と腸内フローラの関係とは?

花粉症は、花粉によって引き起こされるアレルギー疾患です。アレルギーは、本来はウイルスや細菌などの異物を排除するためにはたらく免疫が、食べ物や花粉などの物質にも過剰に反応することで起こります。免疫反応は異物からからだを守るための反応ですが、それが過剰になり、からだにとってマイナスにはたらく場合はアレルギーになるのです。

免疫の役目を担う細胞が集まっている腸は重要な免疫器官ですが、免疫機能の発達・維持には腸内細菌が大きな役割を果たしていると考えられています。人の腸内には1,000種類以上、100兆個もの細菌がすみ着いており、各々がテリトリーを保ちながら全体として「腸内フローラ」という集団を形成しています。この腸内フローラのバランスが乱れると免疫系のバランスも崩れ、アレルギー疾患を発症する要因になると考えられています*1。

花粉症の患者数は増加傾向にありますが、その原因の1つが食生活の変化などによる腸内フローラの乱れだと言われています*1。

乳酸菌やビフィズス菌が花粉症の症状を緩和

花粉症患者の腸内フローラを解析した研究によると、花粉の飛散シーズン前の腸内フローラは健康な人と変わらなかったものの、飛散シーズンの後期では健康な人とは違うパターンを示し、このことが花粉症の症状悪化と関連している可能性があると報告されています*2,。こうしたことから、食事などによって腸内フローラのバランスを整えることで花粉症の予防や症状の改善につなげようとする研究が日本を中心に様々な国で行われています。

特に注目されているのが、乳酸菌やビフィズス菌などの有用菌を含む食品(プロバイオティクス)です。これまでに、ビフィズス菌BB536株や乳酸菌L-92株を含む食品を摂ることで花粉症の症状が緩和するという研究結果が報告されています*3,4。

症状を抑えるには、医師に相談して適切な治療を受けることがもっとも有効ですが、花粉が気になる時期は食事にヨーグルトなどを取り入れてみてもいいかもしれません。

腸内フローラの“多様性”を高める食事を

様々な細菌が存在する多様性の高い状態が腸内フローラの理想的な状態ですが、花粉症患者では腸内フローラの多様性が低いことが分かっています*5。腸内細菌は食事の影響を受けやすく、偏った食事は腸内フローラの多様性を低下させる要因になると言われています*6。

日本人を対象に、腸内フローラの多様性と食事習慣との関係を調べた最近の研究結果によると、きのこや豆類を多く食べる人では腸内フローラの多様性が高いことが明らかになりました*7。きのこや豆類のほかにも、大麦や野菜、海藻など有用菌のエサとなる食物繊維(プレバイオティクス)が豊富な食品は腸内フローラを整える上でオススメの食品です。

おいしい大麦レシピ」では食物繊維をたっぷり摂れるレシピをたくさん紹介しているので、ぜひ活用してみてください。また、腸内フローラの多様性に着目した食事の摂り方については「便秘に悩む人にとっての最高の食べ合わせとは」でも解説していますので、こちらも合わせてご覧ください。

*1 原田岳ら: アレルギー 2018; 67: 197-201.
*2 Odamaki T, et al.: J Med Microbiol 2007; 56: 1301-1308.
*3 榎本雅夫ら: 耳鼻免疫アレルギー 2015; 33: 231-234.
*4 勘里裕樹: Functional Food Research 2019; 15: 42-47.
*5 Hua X, et al.: EBioMedicine 2016; 3: 172-179.
*6 Heiman ML, et al.: Mol Metab 2016; 5: 317-320.
*7 Sugimoto T, et al.: Nutrients 2020; 12: 2414.