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大麦が食後高血糖の改善に役立つ理由


近年、血糖値に対する注目度が高まるにつれて、糖尿病でなくても血糖値を意識して食事をとるようにする人が増えてきています。食後はどんな人でも血糖値が上がるものですが、血糖値が高い状態が続くと、さまざまな病気のリスクが高まることが分かっています。今回は、食後高血糖が危険な理由や、食後高血糖の予防に役立つ食事の方法について紹介します。

食後高血糖とは、どんな状態?

食事をとると腸から糖が吸収され、血糖値が上昇します。からだには血糖値を一定に保つ仕組みが備わっているため、通常は、食後2時間以内に食事の前の値まで下がります。しかし、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌が十分でなかったり、インスリンが効きにくかったりすると、食後に血糖値が急上昇し、なかなか下がらないということが起こります。この状態を、食後高血糖といいます。

食後高血糖があったとしても、しばらく時間が経てば血糖値が下がり、正常な数値に戻ることもあります。その場合は糖尿病とは診断されないため、一見問題ないように思えるかもしれません。しかし、食後高血糖があると脳卒中や心筋梗塞で死亡するリスクが高くなったり*1、認知症の発症リスクが高くなったりすることが分かっており*2、決して軽視はできません。

福岡県久山町に住む40~79歳の人を対象とした大規模な調査研究によると、糖尿病予備軍である食後高血糖の人の割合は男性で17.4%、女性で18.3%とされています*3。この調査研究では、2012年までのデータをもとに解析が行われているため、現在では、食後高血糖の人はもっと多い可能性があります。食後高血糖は空腹時の血糖値を測定する健康診断では見つからないため、知らず知らずのうちに食後高血糖になっている人も少なくありません。

食後高血糖を改善するための食べ方とは

食後高血糖を予防するための基本は、適度な運動とバランスのよい食事です。最近の研究から、標準体重の人と比べて少食で運動不足のやせ型の女性のほうが食後高血糖になりやすいことが明らかにされています*4。そのため、食後高血糖を防ぐには極端に食事の量を減らすダイエットは避け、日頃からしっかりからだを動かして適切な量の食事をとることが大切です。

からだに必要な糖質を摂りながら食後の血糖上昇を穏やかにするには、食事の仕方を工夫するとよいでしょう。野菜や肉、魚などを先に食べ、炭水化物を後に食べると、食後の血糖上昇が抑えられることが分かっています*5,6。


また、血糖値を上げにくい食品をとるように心がけ、セカンドミール効果を狙うのもよい方法です。セカンドミール効果とは、最初にとった食事(ファーストミール)が次の食事(セカンドミール)をとった後の血糖値にも影響を及ぼすことをいいます。

つまり、朝食に食物繊維が豊富で血糖値を上げにくい食事をとると、その効果が昼食にも及び、昼食後の血糖上昇が穏やかになるというわけです。昼食は外食が多くてなかなか血糖値を意識した食事をとれないという人は、野菜や果物、豆類、大麦などを多く取り入れた血糖値の上がりにくい朝食をとるとよいでしょう。

主食にはセカンドミール効果のある大麦を取り入れよう

食品が血糖値を上昇させる度合いを表す指標をグリセミック・インデックス(GI)といいますが、主食となる穀類は糖質を多く含んでいるため、GIが高い傾向にあります。しかし、穀類の中でも大麦はGIが低く*7、低GI食品に分類されています。からだに必要な糖質を摂りながら食後高血糖対策をするには、大麦を主食に取り入れる方法がぴったりです。

日本人の男女18名を対象とした研究によると、朝食に大麦と白米を1:1の割合で混ぜた麦ごはんを食べたグループでは、白米ごはんを食べたグループよりも食後の血糖上昇が抑えられることが報告されています。また、両グループとも昼食は同じメニューを食べたにもかかわらず、朝食に麦ごはんを食べたグループでは昼食後の血糖上昇も抑えられたことから、麦ごはんにはセカンドミール効果があることも確認されました*8。

同じ麦ごはんでも、大麦の割合が高いほどGIが低く血糖値を上げにくいため*9、食後高血糖対策には大麦を多めに配合した麦ごはんがおすすめです。配合量別の作り方は「麦ごはんの炊き方 おすすめ配合量」で紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

*1 Nakagami T, et al.: Diabetologia 2004; 47: 385-394.
*2 Ohara T, et al.: Neurology 2011; 77: 1126-1134.
*3 Mukai N, et al.: Diabetol Int 2019; 10: 198-205.
*4 Sato M, et al.: J Clin Endocrinol Metab 2021; 106: e2053-e2062.
*5 Sun L, et al.: Clin Nutr 2020; 39: 950-957.
*6 Kuwata H, et al.: Diabetologia 2016; 59: 453-461.
*7 Atkinson FS, et al.: Am J Clin Nutr 2021; 114: 1625-1632.
*8 福原育夫ら: Jpn Pharmacol Ther 2013; 41: 789-795.
*9 青江誠一郎ら: 日本栄養・食糧学会誌 2018; 71: 283-288.