ホーム食べるからだメンテナンス/病気の予防やダイエットに役立つ「全粒穀物」とは?

内側から整える食生活のすすめ

食べるからだメンテナンス

病気の予防やダイエットに役立つ「全粒穀物」とは?


健康にいい食品として様々なメディアで取り上げられている、全粒穀物。そもそも、「全粒」とは何を指すのか知っていますか?今回は、全粒穀物とはどのような食品で、どのような健康効果があるのかを分かりやすく解説します。

そもそも、全粒穀物とはどんな食品?

「穀物」とは、私たちが主食として食べている小麦や米などのイネ科の植物の種子のことを指します。食用の穀物には小麦や米のほか、とうもろこしや大麦、きび、あわ、ひえ、ライ麦、えん麦などがあります。イネ科ではありませんが、そばやキヌア、アマランサスなどもでんぷんを多く含むため、穀物とみなされます。

穀物の粒は、「胚芽」「胚乳」「外皮」という3つの部分から構成されています。

・ 胚芽:脂質や脂溶性ビタミン、ミネラルを多く含む。精白する際に取り除かれるが、胚芽を残した穀物も市販されている
・ 胚乳:全体の80~85%を占め、でんぷんとたんぱく質を豊富に含む
・ 外皮:食物繊維を多く含む。精白する際に取り除かれ、米の場合は「糠(ぬか)」、小麦の場合は「ふすま」と呼ばれる

「全粒穀物」は精白していない穀物のことを指し、胚芽、胚乳、外皮のすべてが含まれます。胚芽や外皮が取り除かれていない分、全粒穀物は精白された穀物よりも食物繊維やビタミン、ミネラル、抗酸化物質などが豊富です*1。

全粒穀物を使った食品には、パンや朝食用シリアル、パスタ、ビスケットなどがあります。玄米のように加工せずに食べられるものは全粒穀物であることは明らかですが、パンやシリアルのように加工された食品に関しては、どのくらい全粒穀物を含んでいれば「全粒穀物食品」と言えるかという厳密な定義がありません。

国際的には、1食(約30g)当たり8g以上の全粒穀物が含まれている食品を「全粒穀物食品」とみなすことが提唱されています*2。

生活習慣病予防やダイエットに役立つ全粒穀物

食物繊維やビタミン、ミネラルなど健康に有用な成分を豊富に含む全粒穀物は、様々な病気の予防に役立つ可能性があります。中でも多くの研究が行われ、確かなエビデンスがあるのが2型糖尿病の予防効果です。全粒穀物の摂取量が多い人では、摂取量が少ない人と比べて2型糖尿病の発症リスクが約30%低いと報告されています*3。

また、全粒穀物を多く摂取する人では体重が増加しにくいことも分かっています*3。最近発表された日本人を対象とした研究では、全粒穀物を日常的に食べている人では高血圧を発症するリスクが低いことが明らかになりました*4。30歳以上の2人に1人が発症すると言われるほど日本人に多い高血圧ですが、全粒穀物はその予防に役立つと期待されます。

病気の発症リスクだけでなく、病気の死亡リスクと全粒穀物の摂取量との関係を調べた研究も数多く行われています。複数の研究結果を解析した研究論文によると、全粒穀物の摂取量が多いと心血管疾患やがんによる死亡リスクが低く、全死因での死亡リスクも低いと報告されています*5,6。全粒穀物は健康長寿にも有用だと考えられるのです。

全粒穀物はどのくらい摂るべき?

日本では全粒穀物をどのくらい摂るべきか定めた基準はありませんが、アメリカやカナダなどいくつかの国では、食事ガイドラインで全粒穀物の摂取が推奨されています。アメリカの食事ガイドラインでは、食事で摂る穀物の半分以上は全粒穀物にすることを推奨しており、精白穀物を全粒穀物に置き換えて摂取量を増やすよう勧めています*7。

日本は世界でも全粒穀物の摂取量が少ない国であるため、いきなり半分を全粒穀物にするのはハードルが高いかもしれません。玄米や雑穀は日本人にとって馴染みのある全粒穀物なので、まずは主食の白米を玄米や雑穀ごはんに置き換えるところから始めてみてはいかがでしょう。

ちなみに、大麦は一般的に精白して食べる穀物なので全粒穀物ではありませんが、胚乳部に食物繊維がたっぷり含まれているので、精白されても全粒穀物のような性質を持つ珍しい穀物です。食事に大麦を取り入れれば、手軽に食物繊維の摂取量を増やすことができます。

シリアルやパスタなどの全粒穀物食品を選ぶ場合は、原材料名の最初に「全粒粉」と書かれたものを選ぶのがおすすめ。全粒粉は比較的入手しやすい食材なので、全粒粉のパンやお菓子を自分で作ってみるのもいい方法です。全粒穀物の摂取量を増やすには、無理せず美味しく続けられる方法を見つけることが大切です。

*1 P NPV, et al.: Nutrients 2020; 12: E3045.
*2 Ferruzzi MG, et al.: Adv Nutr 2014; 5: 164–76.
*3 Reynolds A, et al.: Lancet 2019; 393: 434-45.
*4 Kashino I, et al.: Nutrients 2020; 12: 902.
*5 Aune D, et al.: BMJ 2016; 353: i2716.
*6 Chen GC, et al.: Am J Clin Nutr 2016; 104: 164-72.
*7 The U.S. Department of Health and Human Services and the U.S. Department of Agriculture.: 2015-2020 Dietary Guidelines for Americans. 8th ed., 2015.