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代替肉として、いま注目の大豆ミート。その健康効果とは?


「畑の肉」と言われるほど、たんぱく質が豊富な大豆。近年、大豆を加工した大豆ミートが肉の代わりになる食品として注目を集めています。その背景には、SDGs(持続可能な開発目標)に対する社会的な関心の高まりなどがありますが、健康面のメリットが大きいことも大豆ミートが広がりを見せている要因の1つです。今回は、そんな大豆ミートの健康効果について詳しく解説します。

代替肉への注目が高まっているのは、なぜ?

たんぱく質を豊富に含む植物性の原料を加工し、肉の食感に近づけた代替肉は、ベジタリアンやヴィーガン向けの食品として欧米を中心に広がってきました。代替肉の原料には、大豆や小麦、えんどう豆などがありますが、最も普及しているのが大豆を原料にした大豆ミートです。

豆腐や納豆、油揚げなど、日本では昔から大豆を使った食品が食文化に根付いています。そのため、欧米諸国と比べると日本人の大豆消費量はもともと多く、普段から欧米のベジタリアンが摂る量と変わらないくらい大豆たんぱく質を摂っています*1。

日本人にとってそれほど身近な大豆食品ですが、世界的な「脱ミート」の潮流が影響し、「肉の代わり」という観点からも注目されるようになってきました。食肉生産は環境負荷が大きいことに加え、世界の人口増加に伴い、持続可能な食料調達が必要なことから、地球環境や社会のために代替肉を選ぶという考え方が広がりつつあります。

女性の健康に役立つ成分が摂れる大豆ミート

豆類は植物性たんぱく質の主要な供給源ですが、中でも大豆はたんぱく質を多く含み、糖質が少ないため、健康的なライフスタイルを目指す人にとって魅力的な食品です。大豆はたんぱく質だけでなく、イソフラボンや不飽和脂肪酸、ビタミンB群、食物繊維、鉄、カルシウムなどの供給源でもあります。大豆をまるごと使った大豆ミートにも、これらの栄養素はもちろん含まれています。

大豆ミートに含まれる成分のうち、大豆イソフラボンの効果は世界中で広く研究されています。大豆イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンと構造が似ていることから、エストロゲンと似た作用を持つことが知られています*2。そのため、大豆イソフラボンは閉経後の女性の健康に役立つと考えられており、実際に、更年期症状の軽減や骨粗鬆症の予防に有用であることが確認されています*3,4。

また、大豆イソフラボンは女性が最もかかりやすいがんである、乳がんの予防にも役立つと言われています。日本乳癌学会のガイドラインでは、イソフラボンをサプリメントから摂取した場合の効果は定かではないとして、イソフラボンは大豆食品から摂ることを推奨しています*5。大豆ミートはイソフラボンの摂取源としてぴったりの食品です。

大豆イソフラボンは男性の健康にもメリットが!

前立腺がんは男性が最もかかりやすいがんですが、実は、大豆イソフラボンは前立腺がんの予防にも役立つ可能性があると言われています*6。

女性ホルモンであるエストロゲンは男性の体内でも分泌されており、さまざまな臓器に存在するエストロゲン受容体に結合することで、その作用を表します。大豆イソフラボンはエストロゲンと構造が似ているため、エストロゲン受容体と結合することができ、それによって前立腺がんの発症を抑える作用を発揮すると考えられているのです*7。実際に、大豆食品や大豆イソフラボンの一種であるダイゼイン、ゲニステインの摂取量が多いと前立腺がんのリスクが低いことが確かめられています*7。

また、日本人男性を対象にした研究によると、大豆イソフラボンを多く摂ると動脈硬化の予防につながることが報告されています*8。一般的に、動脈硬化は女性に比べて男性のほうがかかりやすいため、大豆イソフラボンを効率よく摂れる大豆ミートは女性だけでなく男性にとっても有益な食品と言えそうです。

色や形状、食感など、さまざまなタイプが市販されている大豆ミート。大豆ミートをメニューに取り入れる飲食店や、惣菜として販売する小売店も増えてきています。SDGsへ対応し、健康面のメリットも大きい大豆ミートは、より身近な存在になっていくと期待されます。

*1 Rizzo G, et al.: Nutrients 2018; 10: 43.
*2 厚生労働省: 大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A, 2006.
*3 Taku K, et al.: Menopause 2012; 19: 776-790.
*4 Taku K, et al.: Maturitas 2011; 70: 333-338.
*5 日本乳癌学会 編: 患者さんのための乳がん診療ガイドライン2019年版.
*6 日本泌尿器科学会 編: 前立腺癌診療ガイドライン2016年版.
*7 Applegate CC, et al.: Nutrients 2018; 10: 40.
*8 Uemura H, et al.: Sci Rep 2018; 8: 9667.