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寝不足解消に役立てたい、睡眠の質を上げる食べ物


世界の中でも特に睡眠時間が短い日本。成人の3~4割は何らかの不眠症状があると言われており*1、睡眠の質を上げる方法は大きな関心事になっています。睡眠の質を上げるには適度な運動やストレス解消が効果的とされていますが、食事を工夫することも有用です。今回は、睡眠の質を上げる食べ物や食事のとり方について詳しく解説します。

睡眠の「量」と「質」が健康に及ぼす影響

睡眠は心身の疲労を回復する上で重要な役割を担っています。睡眠時間が慢性的に不足すると肥満や高血圧、2型糖尿病などのリスクが高まる可能性があり*2-4、生活習慣病を予防するためにも睡眠は毎日しっかりとる必要があります。

では、適切な睡眠時間とはいったい何時間なのでしょうか?実は、睡眠時間には絶対的な基準があるわけではありません。なぜなら、睡眠時間は年齢や性別、季節などの影響を受けて変動するからです*5。また、体質によって3、4時間の睡眠で十分な人もいれば、10時間眠らないと足りないという人もいます。時間の長さにはこだわらず、日中の眠気に困らないかどうかを目安に睡眠をとるようにするとよいでしょう。

睡眠は量だけでなく、質も重要です。睡眠時間が十分でも、ぐっすり眠れた感覚がなく、朝すっきり目覚められないようなら、質の良い睡眠をとれていないと考えられます。睡眠の質はメンタルヘルスや中年以上の認知機能に影響すると考えられており*6,7、からだだけでなく精神面の健康を守るためにも睡眠の質を上げることが大切なのです。

睡眠の質を上げるのに効果的な食品成分とは

コーヒーや紅茶などに含まれるカフェインには覚醒作用がありますが、反対に深い睡眠を促し、睡眠の質を向上させる食品成分も存在します。代表的な成分が、メラトニン、トリプトファン、γ-アミノ酪酸(GABA)です。

■メラトニン
メラトニンは脳の松果体と呼ばれる部分から分泌されるホルモンで、体内時計を調節して自然な眠りを導く作用があります。年齢を重ねると夜間に目覚める回数が増えたり、睡眠時間が短くなったりしますが、これは加齢とともにメラトニンの分泌量が減ることが要因の1つだと考えられています。メラトニンは食品にも幅広く含まれており、メラトニンが豊富な食品を摂ることが睡眠の質の向上につながる可能性があります*8。
[メラトニンが豊富な食品*9]しょうが、トマト、イチゴ、サクランボ、クランベリー、ピスタチオ、肉類

■トリプトファン
トリプトファンは、人の体内では作り出すことのできない必須アミノ酸の1つです。トリプトファンは睡眠の質を高めるために重要なメラトニンやセロトニンを作る元となる成分であり、トリプトファンが不足すると睡眠時間や睡眠の質が低下することが分かっています*8。
[トリプトファンが豊富な食品]肉類、魚類、卵、大豆製品、乳製品

■γ-アミノ酪酸(GABA)
GABAはアミノ酸の一種で、脳や脊髄などに存在し、興奮を抑える抑制系の神経伝達物質として機能する成分です。不眠に悩む人を対象とした研究によると、就寝1時間前に発芽玄米から抽出されたGABAを摂取したところ、睡眠の質が改善したと報告されており*10、GABAは睡眠の質を高める上で有用だと考えられています。
[GABAが豊富な食品]発芽玄米、大豆、じゃがいも、かぼちゃ、トマト、茶

睡眠の質を上げるために押さえておきたい食事のポイント

睡眠の質を上げるには、食事のとり方も大切です。夜間に1日のカロリーの大部分を摂取したり、就寝の直前に夕食をとったりしていると、体内リズムの乱れや消化不良から睡眠の質が低下してしまいます。夕食は就寝の2時間前までにとるようにしましょう*8。

食事は特定の食品に偏らず、炭水化物、たんぱく質、脂質をバランスよく摂れるような内容にすると睡眠の質の向上につながります。野菜や果物、全粒穀物、豆類、魚が豊富な地中海食は睡眠の質の改善に有用だと報告されているため*11、地中海食を参考に食事の内容を見直してみるのがおすすめです。地中海食については「生活習慣病対策に効果的!地中海食を実践するには?」で詳しく解説しているのでそちらをご覧ください。

炭水化物の質は睡眠の質にとって重要だと考えられており、菓子類や精製された穀物などの血糖値を上げやすい食品は睡眠の質を下げてしまいます*12。こうした食品を多く摂っている場合、代わりに食物繊維が豊富な大麦を摂るようにすれば、無理なく簡単に炭水化物の質を改善することができます。「おいしい大麦レシピ」ではさまざまな大麦の食べ方を紹介しているので、大麦を食事に取り入れる際の参考にしてみてください。

*1 厚生労働省: e-ヘルスネット 不眠症.
*2 Kobayashi D, et al.: Sleep Breath 2012; 16: 829-833.
*3 Gangwisch JE, et al.: Hypertension 2006; 47: 833-839.
*4 Beihl DA, et al.: Ann Epidemiol 2009; 19: 351-357.
*5 厚生労働省: 健康づくりのための睡眠指針2014.
*6 Scott AJ, et al.: Sleep Med Rev 2021; 60: 101556.
*7 Li Minchao, et al.: J Affect Disord 2022; 304: 20-27.
*8 Pattnaik H, et al.: Cureus 2022; 14: e32803.
*9 Meng X, et al.: Nutrients 2017; 9: 367.
*10 Byun JI, et al.: J Clin Neurol 2018; 14: 291–295.
*11 Naja F, et al.: Front Nutr 2022; 8: 805955.
*12 Sejbuk M, et al.: Nutrients 2022; 14: 1912.