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健康寿命をのばすために重要なオーラルフレイルの予防


口腔には、食べ物を噛んで飲み込む役割と、言葉を発する役割があります。そのため、口腔機能が衰えると栄養摂取やコミュニケーションに支障をきたす可能性があり、社会生活を営む上で大きな問題となります。今回は、高齢期における口腔機能の維持・向上の重要性を周知すべく誕生した新しい概念「オーラルフレイル」について、詳しく解説します。

オーラルフレイルとは?

加齢に伴い心とからだの機能が低下し、要介護に陥りやすくなった状態のことをフレイルといいます。フレイルは治療や予防を行えば元の健常な状態に戻る可能性があり、健康寿命を延ばすためには、家族や医療者が高齢者のフレイルにできるだけ早く気づくことが重要です。

近年、フレイルの中でも口腔機能に着目した概念として「オーラルフレイル」が提唱され、国が周知のための活動を行っています。口に関する些細な衰えを放置したり、適切な対応を行わないままにしたりすると、口腔機能が低下し、やがては心身の機能の低下にまでつながるおそれがあります。オーラルフレイルはこうした負の連鎖に対して警鐘を鳴らすために誕生した概念です。

オーラルフレイルは次の4つのフェーズから構成されています*1。

[第1レベル]口の健康リテラシーの低下
生活範囲の狭まりや精神面の不安定さ、意欲の低下から、口腔ケアに対する関心度(口腔リテラシー)が下がり、歯周病やむし歯で残存歯数が少なくなるリスクが高まる段階

[第2レベル]口のささいなトラブル
滑舌低下や食べこぼし、わずかなむせなどの些細な口腔機能の低下により、食欲が低下したり、食事選びが偏ったりする段階

[第3レベル]口の機能低下
噛む力や舌運動の低下が顕在化し、低栄養やサルコペニア(加齢による筋肉量の減少および筋力の低下)に陥る段階

[第4レベル]食べる機能の障害
摂食嚥下機能の低下や咀嚼機能不全から、要介護状態、運動・栄養障害に至る段階。「摂食嚥下機能障害」として診断がつく段階であり、医療者による専門的な対応が必要となる

このように、オーラルフレイルは口腔ケアへの関心の低下に端を発する一連の過程を指します。日常生活で生じる些細な口のトラブルを放置すると、やがて食べる機能が低下し、口だけでなく全身のフレイルにつながってしまうのです。

オーラルフレイルを見つけるためのチェックリスト

オーラルフレイルは滑舌の低下や食べこぼし、わずかなむせといった症状で始まるため、見逃しやすく、気づきにくいと言われています。オーラルフレイルの主な兆候には、次のようなものがあります*2。自分自身や家族に当てはまる項目がないか、チェックしてみましょう。

〈オーラルフレイルチェックリスト〉
・半年間で2~3kg以上体重が減った
・以前と比べて歩く速度が遅くなってきた
・お茶や汁物などを飲み込むときにむせることがある
・義歯を使用している
・口内の乾きが気になる
・半年前と比べて、外出の頻度が少なくなった
・半年前に比べて固いもの(さきイカ、たくあんなど)が噛めなくなった
・歯を磨くのは1日に1回以下
・歯科医院を受診するのは1年に1回未満

食事の工夫でできるオーラルフレイル対策

口腔機能が低下すると固いものが噛みにくくなるため、柔らかいものばかり食べるようになり、噛む力がますます低下するという悪循環が生じます。また、食べる食品の種類が減ってしまうため、栄養バランスが悪くなり、身体機能の低下にもつながります。

オーラルフレイルを予防するには、普段からよく噛んで食事をするよう意識することが大切です。食材を大きめに切る、噛み応えのある食材を選ぶ、加熱時間を短くして歯ごたえを残すなど、調理方法を工夫して噛む回数を増やすようにするとよいでしょう。様々な食材を取り入れると噛む回数が自然と増え、栄養のバランスもよくなります。

噛む回数を意識した食事にするための手軽な方法としておすすめなのが、白米ごはんを麦ごはんにチェンジすること。ぷちぷちとした噛み応えのある大麦が混ざった麦ごはんを主食にすれば、自然と噛む回数を増やせます。麦ごはんの作り方は「じつはとっても簡単!麦ごはんの炊き方」で紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

*1 日本歯科医師会: 歯科診療所におけるオーラルフレイル対応マニュアル2019年版.
*2 日本歯科医師会: 通いの場で活かすオーラルフレイル対応マニュアル リーフレット.