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ダイエットにいいだけじゃない!知られざるこんにゃくの健康効果

江戸時代から庶民の日常食として親しまれている、こんにゃく。昔から体に良いことが知られており、最近ではローカロリーかつグルテンフリーの健康食品として、欧米での注目度も高まっています。今回は、こんにゃくに含まれる栄養成分や期待される健康効果について、詳しく解説します。
こんにゃくには、どんな栄養成分が含まれている?
こんにゃくは、こんにゃく芋というサトイモ科の植物の球茎から作られる食品です。昔は、こんにゃく芋をそのまますりおろして作る方法が一般的でしたが、現在は乾燥させたこんにゃく芋を精粉にし、この精粉を原料として使う方法が主流になっています。昔ながらの製法で作られたこんにゃくは、「生芋こんにゃく」と呼ばれています。
食品としてのこんにゃくの魅力の1つが、プリプリとした食感です。この食感は、食物繊維の一種である「グルコマンナン」によって生み出されています。こんにゃく精粉には水溶性食物繊維であるグルコマンナンが多量に含まれており、水に溶かすとゲル状になり、粘性が増加します。そこに水酸化カルシウムなどの凝固剤を加えることで、グルコマンナンは水溶性から不溶性食物繊維に変化し、こんにゃく特有の歯ざわりが生まれます。
グルコマンナンを水で練って固めることで作られるこんにゃくは、97%程度が水分で、残りの3%の大部分が食物繊維です。カロリーがとても低いにもかかわらず満腹感を得られるため、こんにゃくはダイエットに効果的な食品と言えます。
栄養がほとんどないと思われがちですが、こんにゃくの食物繊維含有量は100gあたり2.2gであり、蒸したさつまいもと同じレベルです。また、こんにゃくは100gあたり43mgのカルシウムを含んでおり、これはカルシウムが豊富なことで知られる牛乳の約4割に相当する量です*1。食物繊維もカルシウムも、日本人にとって不足しがちな栄養素であり、こんにゃくはカロリーを気にせずこれらの栄養素を補えるという点でも魅力的な食品です。
こんにゃくの食物繊維は腸活にいいって、ホント?
食物繊維の摂取不足は、慢性的な便秘を引き起こす要因の1つです。こんにゃくはグルコマンナンという食物繊維が豊富なため、繊維不足からくる便秘の解消に役立つ可能性があります。実際に、便秘に悩む人を対象にした研究によると、食物繊維が少ない食事にグルコマンナンを追加したところ、排便の量や排便の頻度が増加したと報告されています*2。
さらに、グルコマンナンは腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスを整え、腸内環境を改善する作用もあると考えられています。食事から摂取したグルコマンナンは消化されずに大腸に到達し、腸内に棲みつく乳酸菌やビフィズス菌などの有用菌によって分解(発酵)されます。この発酵の過程で生成される短鎖脂肪酸(酢酸や酪酸、プロピオン酸など)は、腸内環境を酸性に傾けて病原菌の増殖を抑えたり、腸管のバリア機能を高めたりする作用があり、腸の健康維持に重要な働きをします*3,4。
前述の便秘に悩む人を対象とした研究でも、食事にグルコマンナンを追加することで、便に含まれる有用菌の量が増え、短鎖脂肪酸の濃度が上昇することが確認されています*2。
全身の免疫細胞の約6割が存在する腸は、最大の免疫器官とも言われており、腸の健康は免疫力を維持する上でも重要です。特に、短鎖脂肪酸は腸の免疫細胞を増やしたり、免疫細胞の正常な機能をサポートしたりする役割を担っています。放射線治療を受けたマウスにグルコマンナンを経口摂取させたところ、腸内フローラの改善や腸内の炎症の緩和が認められ、免疫機能が強化されたという研究結果が報告されており*5、グルコマンナンは免疫機能にも良い影響を与える可能性があります。
こんにゃくの食物繊維は血糖値や血中脂質を下げる効果も!
こんにゃくに含まれるグルコマンナンは、腸の健康以外にも、様々な健康効果があることが知られています。特に期待されているのが、血糖値やLDL-コレステロール、中性脂肪の値を低下させる作用です。
日本人を対象にした研究によると、グルコマンナンを添加したおかゆを食べた場合、通常のおかゆを食べた場合と比べて食後の血糖上昇が抑えられ、その効果は糖尿病予備軍(境界型)の人でより顕著だったと報告されています*6。同様に、グルコマンナンを添加したおかゆが食後の血中脂質に及ぼす影響を調べた別の研究によると、グルコマンナンを0.8%含むおかゆを食べた場合では、通常のおかゆを食べた場合と比べて食後の中性脂肪値が有意に低下したと報告されています*7。
また、複数の研究結果を総合的に解析した研究報告によると、1日あたり3gのグルコマンナンを摂取すると、LDL-コレステロール値を10%低下させることができるという効果が示されています*8。
このようなグルコマンナンの健康効果に加え、満腹感を得ながら摂取カロリーを抑えられるこんにゃくは、肥満や生活習慣病、メタボリックシンドロームの予防に理想的な食品と言えます。様々な料理に取り入れることができ、歯ごたえのある食感で料理のアクセントになるところも、こんにゃくの良い点です。
食物繊維であるグルコマンナンは、摂りすぎると下痢や便秘などのおなかの不調につながる可能性があることから、欧州食品安全機関(EFSA)は食品から摂取するグルコマンナンは1日3gまでとするよう推奨しています*9。こんにゃくには100gあたり2.2~3.0gのグルコマンナンが含まれていると推計されるため*1、健康のために毎日摂りたいという場合は、1日あたり100g程度までを目安にするとよいでしょう。
*1 文部科学省, 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年, 2023.
*2 Chen H-L, J Am Coll Nutr 2008; 27: 102-108.
*3 Li Y, et al.: Food Chem X 2023; 21: 101089.
*4 Changchien C-H, et al.: Br J Nutr 2020; 123: 319-327.
*5 Liu D, et al.: Int J Biol Macromol 2023: 240: 124402.
*6 Yoshida A, et al.: Ann Nutr Metab 2020; 76: 259-267.
*7 Nagasawa T, et al.: Nutrients 2021; 13: 2191.
*8 Ho HVT, et al.: Am J Clin Nutr 2017; 105: 1239-1247.
*9 EFSA Panel on Food Additives and Nutrient Sources added to Food (ANS), et al.: EFSA Journal 2017; 15: e04864.

