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便秘や生活習慣病予防に!今こそ「穀物繊維」に注目すべき理由


食物繊維を多く摂るには、野菜をたくさん食べなければいけないと思っている人は少なくないかもしれません。たしかに野菜には食物繊維が含まれていますが、毎日無理なく食物繊維を摂るなら、主食である穀物に着目することが大切です。今回は、穀物に含まれる食物繊維(穀物繊維)の持つ健康効果について詳しく解説します。

食物繊維不足解消の切り札となる、穀物繊維

食物繊維は健康にいいということは広く知られていますが、1日にどのくらい摂ればいいか知っていますか? 厚生労働省が公表する「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、1日に摂るべき食物繊維の目標量(30~64歳の場合)は、男性で22g以上、女性で18g以上とされています*1。

しかし、健康維持のためには、大人なら少なくとも1日に25g以上の食物繊維を摂ることが理想的*1。実際には多くの日本人が食物繊維を十分摂れていない状況にあるので、目標値はあえて低く設定されています。

日本人が昔から食物繊維不足だったかというと、実はそうではありません。1955年には1日に22g以上あった日本人の食物繊維摂取量は、年々減少し続け、2013年になると14gにまで落ち込んでしまいます*2。その大きな要因が、米離れや大麦などの雑穀を食べる機会が減ったことです。

日本の食生活では、穀物は依然として食物繊維の重要な供給源です。かつてのレベルまで食物繊維の摂取量を戻すには、穀物に含まれる食物繊維(穀物繊維)に改めて目を向け、意識的に摂取量を増やすことが効率的だと言えそうです。

便秘解消におすすめの穀物繊維は?

身近で市販されている穀物には、米や小麦、とうもろこし、大麦、きび、あわ、そば、キヌア、アマランサスなどがあります。穀物の粒は、「胚芽」「胚乳」「外皮」という3つの構造からなっており、食物繊維は外皮に多く含まれています。

外皮は精白する際に取り除かれてしまうため、穀物繊維を多く摂取したいなら精白されていない「全粒穀物」を選ぶのがおすすめです。ただし、大麦に関しては胚乳部分にも食物繊維が多く含まれているので、精白されていても全粒穀物と同じように穀物繊維をたっぷり摂取できます。日本では全粒穀物の摂取基準は明確にされていませんが、アメリカでは「食事で摂る穀物の半分以上は全粒穀物にすること」が推奨されています*3。

食物繊維には、水に溶ける「水溶性食物繊維」と水に溶けない「不溶性食物繊維」があります。一般的に、穀物繊維は不溶性食物繊維が多くを占めていますが、大麦のように不溶性食物繊維と水溶性食物繊維がバランスよく含まれている穀物もあります。どちらの食物繊維も健康なお通じには欠かせない成分です*4。

便秘のマウスを用いた研究によると、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維を1:1の割合で摂取したときに便秘解消効果が最も高いことが示されており*5、どちらも含む大麦の穀物繊維は便秘対策に適していると言えそうです。

穀物繊維は便秘以外の病気の予防にも役立つ

穀物繊維の摂取と健康との関係は世界中の様々な研究で明らかにされており、穀物繊維がもたらすメリットは便秘の解消だけにとどまりません。

例えば、穀物繊維の摂取量が1日に10g増えると2型糖尿病の発症リスクは25%減り*6、大腸がんの発症リスクは10%減る*7 という関連性が認められています。また、65歳以上のシニア層では、穀物繊維の摂取量が多い人のほうが脳卒中や心筋梗塞などの循環器病の発症リスクが低いことも明らかになっています*8。

このように様々な病気の発症リスクを下げる可能性を持つ穀物繊維は、健康寿命の延伸が大きな課題になっている現代の日本にとって、特に重要な栄養素と言えます。

穀物繊維をたくさん摂りたい場合は、いつもの白米を玄米や雑穀ごはんに変えたり、白米ともち麦などの大麦を混ぜて炊く麦ごはんにしたりするのがおすすめです。ただ、大切なのは無理をせず習慣化すること。まずは、いつもの白米を炊飯するときに雑穀・大麦(押麦・もち麦など)を大さじ1杯プラスするところから始めてみましょう。

*1 厚生労働省: 日本人の食事摂取基準(2025年版)
*2 青江誠一郎: 日本調理科学会誌 2016; 49: 297-302.
*3 U.S. Department of Agriculture and U.S. Department of Health and Human Services: Dietary Guidelines for Americans 2020-2025. 9th ed., 2020.
*4 McRorie JW, et al.: J Acad Nutr Diet 2017; 117: 251-264.
*5 Wang L, et al.: Food Chem X. 2024; 24: 101996.
*6 Neuenschwander M, et al.: BMJ. 2019; 366: l2368.
*7 Aune D, et al.: BMJ. 2011: 343: d6617.
*8 Mozaffarian D, et al.: JAMA. 2003; 289: 165