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大麦のポテンシャルが輝く! クラフトビールの世界(前編)


暑い夏の時期、「キンキンに冷えたビールが何よりの楽しみ!」という方も多いのではないでしょうか。多くの人に愛されているビールの中でも、近年、飛躍的に盛り上がりを見せているのが「クラフトビール」。多種多様で個性豊かな味わいが特徴ですが、実はこの味わいの違いに深くかかわっているのが原料の大麦です。今回は、日本におけるクラフトビールのリーディングカンパニー「株式会社ヤッホーブルーイング」の製造部門責任者・ブルワー(ビール醸造士)森田正文さんに、知られざるクラフトビール造りの裏側をうかがいました。

そもそもクラフトビールとは?

「クラフトビール」は、特定の条件などにより厳格に定義されているものではありません。一般的なビールのように、原料には大麦からつくられる「麦芽(ばくが)」が使われていて、基本的な製法も同じ。 クラフトビールとは「つくり手たちの革新性から生まれた多様な味わいのビール」のこと。一般的なビールとの違いは、味わいにあります。クラフト(craft)は英語で「技術」「工芸」「職人技」などを意味する言葉。クラフトビールとは、ブルワーたちの創意工夫で生まれた、個性とおいしさが両立した多様で魅力的なビールを指します。

ビールの原料はたった4つ! ビール造りに適した大麦とは?

ビールの主原料は、①麦芽、②ホップ、③酵母、④水の4つ。大麦を発芽させた「麦芽」をお湯に入れて麦芽中のデンプンを糖に変え、麦のジュースのような「麦汁」をつくったら、苦味や香りをつけるホップを加えて酵母で発酵・熟成させたものがビールになります。麦芽の原料となる大麦には、二条大麦と六条大麦の2種類がありますが、ビール造りには粒が大きくデンプンが多く含まれている二条大麦が使われています。

(写真左から、水、麦芽、ホップ、酵母)

どうして発芽させるの? 麦芽がビールの味の決め手に!

実は、大麦を発芽させないとビールを造ることができません。というのも、ビールの「アルコール」と「炭酸ガス」は、発酵の過程で大麦由来の「糖」を酵母が食べることにより生み出されるからです。しかし、収穫した状態の大麦には糖が十分に含まれていません。そこで大切になるのが、発芽させる作業。発芽させると、大麦の種子の中の酵素がデンプンを糖に変えてくれます。このように、酵素が活性化し、デンプンを糖分に変える準備ができた状態で寸止めしたものを乾燥させ、根と芽を取り除き、いつでも使えるように原料として整えたものが「麦芽」です。

多様で個性的な味わいのビールはどうやって造られる?

原料も作り方も基本的には量産されるビールと大きく変わらないクラフトビールですが、なぜ多様で個性的な味わいになるのでしょうか。たとえば、麦芽をみてみると、どの産地でいつ採れた大麦を使うのかといったことから、麦芽を作る際に低温でじっくり乾燥させるのか、高温で焦がしながら乾燥させるのかなどによって、味わいは変わってきます。さらに、ホップや酵母にもいろいろなタイプがあります。これらの原料をどんな配合でどのように組み合わせるのか、さらには原料を使うタイミングや温度管理など製造工程を少し変えることで、最終的なビールの味わいは変化します。

醸造家たちは試行錯誤しながら、自分の目指す味を実現するための「最適」を見つけ出します。フルーツのような華やかな香りがするものから、チョコレートやコーヒーを思わせるコクを持つ飲みごたえのあるものまで実にバリエーションが豊富。個性的な多種多様なビールができるのは、小規模生産を行うクラフトビールならではのもの。それは、醸造家の技がつまった作品なのです。

後編では、ビール造りにおける大麦や麦芽の役割について、より詳しくお届けします!

取材協力・写真提供
株式会社ヤッホーブルーイング
https://yohobrewing.com/