夏の栄養メシ! 麦ごはんの「冷や汁」は鎌倉時代にも食べられていた

暑い夏でもサラリと食べられて栄養満点! と、近年、全国的に親しまれるようになった宮崎県の郷土料理「冷や汁」。魚とごま入りの炙り味噌で作る冷たい汁を、麦ごはんにかけて食べる一品です。そんな冷や汁は、すでに鎌倉時代には食べられていたとか。そのルーツに想いを馳せながら、この夏はおいしい冷や汁食べて暑さを乗り切りましょう!
宮崎県の郷土料理「冷や汁」は麦ごはんで食べるのが本場流!
大手食品メーカーからレトルトが登場するなど、すっかりメジャーになった宮崎県の郷土料理「冷や汁」。焼いた鯵や鯛などのほぐし身とごまを加えた味噌を軽く炙り、だしで溶いて冷やしたものを、きゅうりなどの薬味と豆腐をのせた温かいごはんにかけて食べるのが基本です。今は手軽に白米が使われることもありますが、本場・宮崎県では「冷や汁には麦ごはん」がお決まり。
「冷や汁」は700年前から夏の“ズボラ”栄養食だった!?
詳しい発祥こそ明らかになっていないものの、もともとは、農民たちが暑い夏の重労働の時に、麦ごはんに生味噌をのせて水をかけたのが冷や汁の始まりだと考えられています。時間や食欲のない時でも、簡単に・安く・十分な栄養を摂る知恵として伝承されてきた、いわば現代でいう「夏バテ防止の“ズボラ”飯」だったんですね。
ただし、当時の農民たちにとって米は非常に貴重なもの。丸のままの炊いた大麦を水でふやかし、それをもう一度炊き上げたものにかけていたのだとか。かさ増ししながら、麦も大切に食べていたようです。味噌に鯵や鯛を使うのも、現代流の贅沢バージョンです。炒った煮干しを材料にするのが当時の庶民の味でした。
冷や汁に関する記述はすでに、鎌倉時代に書かれた「鎌倉管領家記録」に残されています。「武家にては飯に汁かけ参らせ候、僧侶にては冷や汁をかけ参らせ候」と記されているとおり、約700年前には食べられ、僧侶によって全国に広められたことがわかります。発祥の地こそ不明ですが、こうして少しずつ各地に伝わり根付いていった冷や汁。実は関東や近畿地方にも、同じ「冷や汁」という名前の料理は存在します。しかし、原形を留めていると思われているのが、宮崎県の冷や汁なのです。
【マメ知識】全国の冷や汁あれこれ
全国で親しまれる「冷や汁」には、さまざまなものがあります。
・埼玉県:稲作の裏作として小麦の栽培が盛んだった埼玉県は“うどん文化”。汁の作り方や味は宮崎県に近いですが、麦ごはんではなく、うどんのかけ汁やつけ汁として食べられます。別名「すったて」とも。
・三重県:原則はごはんにかけない、味噌風味の冷たい汁物です。味噌にごまは入れますが、魚は入れません。
・山形県:他の3県とはまったく異なり、季節の野菜を冷たいだしに浸して作る、おひたし料理です。
麦ごはんの冷や汁で夏を乗り切ろう!
夏の栄養メシ、冷や汁。この夏は、麦ごはんで食べる伝統的な冷や汁をぜひ作ってみましょう!
【材料(4人分)】
煮干し 20g
みそ 60g
だし汁(または湯冷まし)500ml
きゅうり 100g
青じそ 8枚
木綿豆腐 150g(1/3丁)
麦ごはん 600g
すりごま 15g
【下準備】
煮干しは頭と腹わたをとり、フライパンで炒って、ミキサーなどで細かい粉にする。
だし汁(または湯冷まし)は冷やしておく。
【作り方】
[1] 粉にした煮干しをみそに加え、よく混ぜる。
[2][1]をすり鉢の表面に平らに伸ばし、ガスコンロにかぶせるようにして焼く。
[3][2]をだし汁(または湯冷まし)でのばす。
[4] きゅうりは輪切り、青じそは千切りにし、豆腐は軽くつぶして[3]に加える。
[5] 温かい麦ごはんに[4]とすりごまをかける。
(宮崎県都城市 公式HPより)
また、「おいしい大麦研究所」でもアレンジレシピ「豚キムチでスタミナ冷や汁風」を紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。