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麦茶だけじゃない、大麦飲料の魅力とさらなる可能性


昔から日本の庶民に愛飲されてきた麦茶。実はヨーロッパにも、日本の麦茶のように国民に広く親しまれている、大麦を原料とした飲み物があります。今回は、欧米の大麦飲料にスポットをあてます。

古来、イタリアの庶民に愛されてきた “大麦コーヒー”

大麦飲料の代表格といえるのが、古くからイタリアの庶民に愛飲されてきた「カフェ ドルツォ(caffe d’orzo)」です。“orzo(オルゾ)”とはイタリア語で大麦のこと。大麦を低温でじっくりと焙煎して挽いたものをコーヒーのように抽出して作られる飲料で、濃いめに淹れたときの風味や苦みがコーヒーに似ていることから、「大麦コーヒー(カフェ ドルツォ)」の名で呼ばれています。

大麦コーヒーは、街角のバール(立ち飲みコーヒーショップ)やレストランなどで定番メニューとして供されているほか、ティーバッグや挽いた状態の製品が市販され、家庭でも日常的に愛飲されています。

麦茶と違う最大の点は、その作り方 。コーヒーメーカーで抽出したり、フィルターを使ってドリップしたり。あるいは直火式エスプレッソ機を用いて淹れる人も。また、ミルクを加えて、カフェラテやカプチーノとして楽しむ人も少なくないようです。

大麦コーヒーには、ノンカフェインで胃に負担が少なく、健康に効果的なミネラルが豊富に含まれているといった、コーヒーにはない特長があります。そこが、子どもからお年寄りまで安心して飲め、国民的飲料としてイタリアで愛され続けている理由でしょう。

コーヒーの代替品として生まれた“アクア・デ・セバダ(大麦の水)”

大麦コーヒーとよく似た大麦飲料が、スペインにもあります。東部のレバンテ地方で飲まれている「アクア・デ・セバダ(大麦の水)」がそれ。1930年代に起きたスペイン戦争のころ、コーヒー豆が手に入らなくなったことから、コーヒーの代用品として生まれた飲み物です。

作り方は、焙煎して挽いた麦芽を熱湯に入れ、火を止めてじっくりと抽出します。家庭によってレシピはいろいろですが、レモンピールやハーブ、砂糖を加え、香り豊かなフレーバーティーとしていただくのが、オーソドックスな味わい方。戦争が終わってコーヒー豆が復活した後も、胃にやさしく味わい深いアクア・デ・セバダは、誰でも安心して飲めるとあって地域の暮らしの中に根付いています。

サステナブルな着眼点から誕生した新進気鋭の“大麦ミルク”

近年、ヴィーガン(完全菜食主義者)向けの食の需要が高まっているアメリカ。家畜から生み出される動物性ミルクよりも、豆乳、ココナッツミルク、アーモンドミルクといった植物性ミルクはその製造過程が環境にやさしいことから人気急上昇中です。そんななか、注目を集めているのが、最近登場した「大麦ミルク」です。

製造を手掛けるオレゴン州ポートランドのメーカーは、とてもサステナブルな着眼点から大麦ミルクを開発しました。本来であれば廃棄されてしまうであろう、ビール工場で大量に発生する使用済み大麦を、同社の技術によって栄養豊富な大麦として復活させ、大麦ミルクの原料として再利用しているのです。

大麦に含まれる「β-グルカン」などの水溶性食物繊維は、腸内細菌のエサとなることで腸内環境を整え、悪玉コレステロールの値を下げたり、食後血糖値の上昇を抑制したりする効果があることが報告されています。

大麦の持つ健康効果と、SDGsのテーマの1つである資源の再利用。からだにも環境にもやさしい飲料として、大麦ミルクが食卓に並ぶ日もそう遠いことではないかもしれません。