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体脂肪対策にも!見直される味噌汁の健康パワー


日本人にとって、朝の食卓に欠かせない味噌汁。現代のように、日常食として味噌汁が食べられるようになったのは室町時代と言われています。「味噌汁は朝の毒消し」「医者に金を払うよりも、味噌屋に払え」といったことわざがあるように、昔から味噌はからだにいいものと認識されていました。近年はそれを科学的に裏付ける研究結果も報告されており、味噌の効能が改めて注目されています。

戦国武将にも重宝された健康食材

味噌は、蒸した大豆に麹菌を培養した麹(こうじ)を加え、食塩を混ぜて発酵・熟成させた食品です。大豆を主原料とする味噌はたんぱく質の供給源であり、戦国時代には米とともに兵糧として重宝されました。武田信玄は信濃遠征に備えて味噌作りを奨励し、伊達政宗は城下に日本初の味噌工場を建てるなど、名だたる武将は味噌を大事にし、現代の味噌づくりの礎を築いたと言われています。味噌づくりに欠かせない麹は酵素の宝庫であり、多種多様な酵素がはたらくことで原料の大豆にはみられない成分が作り出されます。これらの中には健康に役立つ成分もあり、実際に味噌汁をよく飲む人では胃もたれや胸やけなどの症状が起こりにくいと報告されています*1。

実は、味噌汁は血圧を上げにくい

日本人は塩分の摂取量が多い傾向にあり、高血圧の予防・治療のためには塩分の摂りすぎに気を付けることが大切です。これまで、味噌は主な塩分摂取源の1つと考えられており、血圧が気になる人は味噌汁などの味噌を使った食品の摂取は控えるべきだと言われてきました。しかし、日本人527人を対象に味噌汁の摂取頻度と血圧との関係を調べた研究によると、味噌汁を多く摂取しても高血圧を発症しやすいわけではないということが明らかにされています*2。

1日あたりの塩分摂取量は男性なら8.0g未満、女性なら7.0g未満に抑えるべきとされていますが*3、味噌汁1杯あたりの塩分量は約1~1.5gなので、1日1杯程度であれば塩分の摂りすぎにはなりません。ラットを用いた研究では、味噌汁には塩分と水分をからだの外に排出する利尿作用があることも分かっており*4、味噌汁はむしろ血圧を上げにくい食品だと考えられます。また、味噌にはコレステロール低下作用があり、イソフラボンやサポニンなどの抗酸化成分も含まれていることから*5、塩分を気にして味噌汁を控えるよりも1日1杯食事に取り入れるほうがより健康にいいと言えそうです。

体脂肪が気になるなら、運動&味噌汁!

栄養が豊富で健康づくりに役立つ味噌ですが、最近の研究によると、味噌はダイエットにも有効な食材である可能性が示されています。高脂肪食と一緒にフリーズドライの味噌をマウスに与えたところ、高脂肪食のみを与えられたマウスと比べて内臓脂肪の蓄積が抑制されたのです*6。さらに、味噌による脂肪蓄積抑制効果は運動を行うことによって増強されることも明らかになりました。つまり、運動だけを行うよりも、運動と味噌を取り入れた食事を組み合わせるほうがより効果的に脂肪を減らせると考えられるのです。

健康やダイエットのために食事に味噌を取り入れるなら、手軽で美味しい味噌汁がいちばん。具だくさんの味噌汁にすれば、うまみが加わるだけでなく、からだに必要な野菜をたっぷり摂ることができます。不足しがちな食物繊維を手軽に補うには、味噌汁にゆでたもち麦をプラスするのがおすすめです。作り方は「おいしい大麦レシピ〈もち麦入り食べる豚汁〉」で紹介しているので、こちらも合わせてご覧ください。

*1 Mano F, et al.: J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo) 2018; 64: 367-373.
*2 Ito K, et al.: Intern Med 2017; 56: 23-29.
*3 厚生労働省: 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会報告書, 2014.
*4 Du DD, et al.: Clin Exp Hypertens 2014; 36: 359-366.
*5 海老根英雄.: 日本醸造協会誌 1990; 85: 70-75.
*6 Okouchi R, et al.: Nutrients 2019; 11: 560.