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免疫力を維持するための食事のヒント


ウイルスや細菌といった目に見えない病原体は、私たちの身近な環境に存在しています。しかし、人のからだには病原体の侵入を防ぐバリア機構や侵入してきた病原菌を排除する免疫システムが備わっているため、簡単に感染症にかかることはありません。免疫機能は「免疫力」と呼ばれることもありますが、免疫力は加齢とともに低下することが知られています。今回は、毎日の食事を通して免疫力を維持するヒントを紹介します。

加齢とともに低下する免疫力

私たちのからだに備わる免疫システムは、①病原体の侵入を感知する認識機構、②病原体を殺す排除機構、③免疫を担う細胞どうしが互いに連動し、協力しあう情報伝達機構の3つの要素で成り立っています。こうした免疫システムは様々な器官や細胞が複雑に絡み合って機能しているため、免疫力は血糖値や中性脂肪値のように1つの指標で測定することはできません。

免疫力は個人間で大きなばらつきがあると言われており、その違いには遺伝的な要因や年齢、性別、飲酒・喫煙、運動、食事、ストレス、感染症の罹患歴や予防接種歴などが関係しています*1。免疫力が正常な範囲を大幅に下回れば感染症にかかりやすくなりますが、正常な範囲内で免疫力が下がったとしても、それによって感染症にかかりやすくなるかどうかは分かっていません。

ストレスは免疫力を低下させる要因として広く知られていますが、免疫システムは柔軟性に富むため、健康な人がストレスを受けただけで病気にかかりやすくなることはありません*2。ただ、免疫システムの柔軟性は加齢によって損なわれるおそれがあり、高齢になると免疫力の低下から病気にかかりやすくなります。

運動習慣&食事で免疫力をキープ!

健康な人でも、免疫力は加齢にともなって低下します。免疫力を維持するには、適度な運動と健康的な食事が大切です。免疫力が低下している高齢者ではワクチンに対する免疫反応が低下し、ワクチンを接種しても体内で十分な抗体が作られないことがありますが、インフルエンザワクチンについては、定期的に運動することでワクチンの効果を高められる可能性が研究で確認されています *3。

免疫システムが効率よく機能するには、必須アミノ酸や必須脂肪酸のリノール酸、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビタミンC、鉄、亜鉛、銅、セレンなどの栄養素が必要です*1,4。ビタミンAやビタミンD、ビタミンC、亜鉛は特に不足しがちな栄養素なので、それらを多く含む緑黄色野菜や魚、レバー、卵などを意識して摂るようにしましょう。

食物繊維たっぷりの大麦が腸の免疫機能をサポート

免疫力を強化するには、腸によい食事を摂ることも効果的です。腸は消化・吸収を担うだけでなく、免疫器官としても重要なはたらきをしています。乳酸菌やビフィズス菌などの有用菌を含む食品を「プロバイオティクス」と呼びますが、プロバイオティクスは腸の粘膜や腸に存在する免疫担当細胞にはたらきかけ、免疫機能をサポートすると考えられています*5。実際に、プロバイオティクスの摂取が呼吸器感染症の予防につながることが複数の研究で確認されています*6。

腸の有用菌を効率よく増やすには、有用菌のエサになる食品成分「プレバイオティクス」を摂るのが効果的です。代表的なプレバイオティクスに、オリゴ糖や食物繊維があります。有用菌がプレバイオティクスを分解して作り出される短鎖脂肪酸には、腸内環境を改善するだけでなく、腸のバリア機能や免疫機能によい影響をもたらす可能性があると言われています*5。

穀類の中でも大麦は食物繊維を多く含んでおり、プレバイオティクス効果が期待できる食品です。実際に、大麦の水溶性食物繊維 には有用菌の増殖を助ける作用が認められています*7。大麦にはミネラルやビタミンB群などの免疫機能の維持に必要な栄養素も含まれており、免疫力が気になる人にぴったり。毎日の食事に大麦を取り入れて、感染症に負けないからだを作りましょう。

*1 Calder PC, et al.: Br J Nutr 2002; 88: S165-76.
*2 Segerstrom SC, et al.: Psychol Bull 2004; 130: 601-30.
*3 de Araújo AL, et al.: Age (Dordr) 2015; 37: 105.
*4 Maggini S, et al.: Br J Nutr 2007; 98: S29-35.
*5 Gourbeyre P, et al.: J Leukoc Biol 2011; 89: 685-95.
*6 Hao Q, et al.: Cochrane Database Syst Rev 2015; (2): CD006895.
*7 Arena MP, et al.: Int J Mol Sci 2014; 15: 3025–39.