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チョコレートはからだにいい?エビデンスが示す健康効果


チョコレートの原料であるカカオ豆は「神々の食物」と呼ばれ、マヤ文明の時代には不老長寿の薬として珍重されていたと言われています。ここ20年でチョコレートなどのカカオベース食品の機能性に関する研究は大きく進展し、さまざまな効果があることが分かってきました。今回は、チョコレートに期待できる健康上のメリットや効果的な摂り方について解説します。

チョコレートとココアの違いとは?

チョコレートとココアは、どちらもカカオマスという原料から作られています。カカオマスは、発酵・乾燥させたカカオ豆をローストし、すりつぶしたものです。カカオマスにはココアバターと呼ばれる脂肪分が大量に含まれており、カカオマスから脂肪分を取り除くか、脂肪分をさらに加えるかが、チョコレートとココアの大きな違いになります。

ココアは、カカオマスから脂肪分を適度に取り除き、粉末状にしたものです。一方、チョコレートはカカオマスにココアバターや砂糖、ミルクを加えて固形にしたものです。カカオ豆に豊富に含まれているポリフェノール(カカオポリフェノール)には苦味があるため、カカオマスの割合が低いミルクチョコレートは苦味が少なく、カカオマスの割合が高いダークチョコレートは苦味が強くなります。

カカオポリフェノールには苦味がありますが、健康に有益な作用を持ち合わせています。そのため、ココアやダークチョコレートは健康によいと考えられます。一方、ミルクチョコレートやホワイトチョコレートはポリフェノールの含有量が少ない上、糖分を多く含むため、健康上のメリットはあまりないと言われています*1。

動脈硬化や糖尿病の予防に役立つチョコレート

カカオポリフェノールはカカオ豆の乾燥重量の約10%を占めており、ココアやダークチョコレートは食品の中でも特にポリフェノールが豊富です。カカオポリフェノールには、血圧を下げたり動脈硬化を抑制したりする一酸化窒素の産生を促す作用があります*2。

世界中で行われた複数の研究を解析した研究報告によると、ココアやチョコレートなどのカカオベースの食品を摂ると血管の機能が改善し、習慣的な摂取によって血圧が低下することが分かっています*3。ただ、チョコレートの摂取量が増えると糖分の摂取量も増えてしまうため、食べすぎは禁物です。心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクを下げるには、1週間あたり45g程度を目安にチョコレートを摂るのが良いとされています*4。

また、カカオポリフェノールには、血糖値を下げるはたらきをするインスリンというホルモンの効きをよくする作用もあります*2。適正な体重を維持している若い成人男性では、チョコレートの摂取量が多いほど2型糖尿病の発症リスクが低いと報告されており*5、意外なことにチョコレートは糖尿病の予防に役立つことが分かっています。様々な年齢の男女を含む複数の研究を解析した研究報告によると、糖尿病の発症リスクが最も低くなるのは1週間あたり60g程度のチョコレートを摂取した場合とされています*6。

ミルクチョコレートやホワイトチョコレートはカカオポリフェノールの含有量が少ないので、動脈硬化や糖尿病の予防のためにチョコレートを食べるなら、ダークチョコレートがおすすめです。

チョコレートと大麦を使ったスイーツでおいしく腸活!

近年、腸内環境を改善する食品や食品成分に対する関心が高まっていますが、カカオポリフェノールが腸内細菌に与える影響を明らかにするための研究も進んでいます。これまでの研究から、カカオポリフェノールを含む食品を摂ると乳酸菌やビフィズス菌などの有用菌が増加し、ウェルシュ菌などの有害菌を含むクロストリジウム属の細菌群が減ることが分かっています*7。

有用菌のエサになる水溶性食物繊維にも、有用菌を増やして腸内環境を改善する作用があるため、カカオポリフェノールと組み合わせて摂るとより効果的です。スイーツの材料としても使われる大麦には、β-グルカンと呼ばれる水溶性食物繊維が豊富に含まれており、チョコレートとの相性もぴったり。「おいしい大麦レシピ」では、チョコレートやココアを使った大麦レシピを紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

*1 Petyaev IM, et al.: Front Nutr 2017; 4: 43.
*2 Montagna MT, et al.: Int J Environ Res Public Health 2019; 16: 4960.
*3 Hooper L, et al.: Am J Clin Nutr 2012; 95: 740-51.
*4 Ren Y, et al.: Heart 2019; 105: 49-55.
*5 Matsumoto C, et al.: Am J Clin Nutr 2015; 101: 362–367.
*6 Yuan S, et al.: Nutrients 2017; 9: 688.
*7 Tzounis X, et al.: Am J Clin Nutr 2011; 93: 62-72.