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食事でできる骨粗鬆症対策。骨の健康に役立つ食べ物とは?


健康寿命と切っても切れない関係にある、運動器の健康。骨や関節、筋肉などの運動器の衰えが進行すると、日常生活に支障をきたし、要介護や寝たきりになるリスクが高まります。特に女性が気を付けたいのが、骨折を引き起こす要因となる骨粗鬆症です。今回は骨の健康維持に役立つ栄養素や食品について、詳しく解説します。

健康寿命を延ばすために、若いうちから気を付けたい骨の健康

日本人の平均寿命は延び続けており、2040年には女性の平均寿命は90歳に届くと推測されています。一方で、日常生活が制限されることなく自立した生活を送れる期間である「健康寿命」は、男性では平均寿命より約9年、女性では約12年短く、健康寿命を延ばすことが国を挙げた大きな課題となっています*1。

健康寿命を延ばすために、特に積極的に予防に取り組むべきとして注目が高まっているのが、骨粗鬆症です。骨の強度が低下し骨折しやすくなる病気であり、骨粗鬆症が原因で起こる大腿骨頚部(脚の付け根)の骨折は要介護のきっかけになりやすいことが知られています。

骨粗鬆症は加齢とともに発症リスクが高まる病気ですが、男性と比べて女性のほうが多いことが分かっています。女性ホルモンには骨を維持する働きがあり、閉経期を迎えて女性ホルモンの分泌が低下すると、骨密度が急激に減ってしまいます。最近は若い女性の「やせ」が問題となっていますが、思春期から20歳前後までは一生分の骨量を蓄える時期であり、この時期に過度なダイエットで栄養が不足すると骨量が少なくなり、年齢を重ねてから骨粗鬆症を発症するリスクがさらに高まると考えられます。将来の骨の健康を守るには、若いうちから健康的な生活を送ることが大切なのです。

骨の健康を保つために積極的に摂りたい栄養素とは?

骨の健康のためにはカルシウムが重要であることはよく知られていますが、必要な栄養素はそれだけではありません。カルシウムの吸収を促進するビタミンDや骨へのカルシウムの取り込みを助けるビタミンKは、骨量を維持するために欠かせない栄養素です。また、ビタミンB6、B12、葉酸などのビタミンB群やビタミンCは、骨質の劣化を防ぎ骨を強くする上で必要な栄養素です。

■カルシウム
カルシウムは骨の重要な構成成分です。また、筋肉の収縮など、からだの機能を調整する役割も担っています。血液中のカルシウム濃度が低いときは骨からカルシウムが補われることもあり、骨はカルシウムの貯蔵庫にもなっています。30~60代の場合、1日の摂取推奨量は男性で750mg、女性で650mgとされていますが、男女とも推奨量を満たしていない人が少なくありません*2,3。

カルシウムは腸からの吸収率が比較的低い栄養素であり、高齢になるほど吸収率は低下します。牛乳・乳製品はカルシウムを多く含んでいるだけでなく、吸収率が高いため、カルシウムの供給源として優れた食品です。小松菜や水菜、大豆食品などの植物性食品にもカルシウムは含まれていますが、動物性食品と比べると吸収率が低くなります。普段の食事ではカルシウムが不足しがちという場合は、カルシウム強化食品やサプリメントなどを上手く活用するとよいでしょう。

■ビタミンD
ビタミンDには腸からのカルシウムの吸収を促進する働きがあり、カルシウムと同時に摂取したい栄養素です。高齢者では、ビタミンDが不足した状態が長期にわたって続くと、骨粗鬆症による骨折リスクが高まると言われています。骨だけでなく筋力とも関連することが分かっており、筋力低下による転倒リスクを減らす上でもビタミンDの摂取は重要です。

ビタミンDを多く含む食品には、鮭やしらすなどの魚介類やきのこ類、卵などがあります。ビタミンDは紫外線に当たることで皮膚でも合成されるため、1日15分程度は日光に当たるようにするとよいでしょう。

■ビタミンK
ビタミンKは骨に存在するタンパク質であるオステオカルシンを活性化し、カルシウムの骨への沈着を促す作用があります。ビタミンKは食品から摂れるだけでなく、体内の腸内細菌によっても合成されるため、通常は不足することはほとんどありません。海苔やわかめ、緑黄色野菜などに多く含まれるほか、納豆菌にビタミンKを産生する働きがあるため、納豆に特に多く含まれています。

腸活はおなかだけでなく骨の健康にも効果的!

骨は石のように変化しないイメージを持たれがちですが、生きている臓器として代謝を営んでいます。破骨細胞が古くなった骨を壊し(骨吸収)、骨芽細胞が壊された部分に新しい骨を作る(骨形成)というサイクルを繰り返すことで、健康な骨が維持されています。このバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回ると次第に骨密度が低下していきます。

最近の研究から、この骨代謝のサイクルに腸内細菌叢(腸内フローラ)が関係していることが分かってきています。健康な閉経後日本人女性を対象とした研究によると、枯草菌を含むサプリメントを摂取すると骨吸収が抑えられ、骨密度が増加したと報告されています*4。枯草菌サプリメント摂取群ではビフィズス菌の増加や、病原菌を含むフソバクテリウム属菌の減少が認められており、腸内フローラの改善が骨密度の増加につながったのではないかと考えられています。

また、卵巣を摘出して閉経後の状態に誘導したマウスを用いた研究によると、レジスタントスターチ(難消化性デンプン)を含むエサを摂取した群では、レジスタントスターチを含まないエサを摂取した群と比べて骨密度の低下が抑えられるという結果が得られました*5。レジスタントスターチとは、食物繊維と同じように腸内環境を整える作用があるとして近年注目されている食品成分です。レジスタントスターチ摂取群では腸内のビフィズス菌が多く、骨髄の炎症に関係する生理活性物質の発現が抑えられていたことから、腸内フローラの改善が骨の炎症抑制につながり、骨密度の低下が抑えられた可能性があります。

レジスタントスターチや食物繊維は腸からのカルシウムの吸収を促進するという研究結果も報告されており*6、骨の健康にとってメリットの多い栄養成分です。レジスタントスターチは穀類やイモ類、豆類などから摂ることができますが、中でもおすすめなのが大麦。大麦には腸内細菌によって発酵されやすい発酵性食物繊維も豊富に含まれており、腸内環境の改善にぴったりな食品です。カルシウムを強化した大麦も市販されているので、手軽に効率よく骨の健康を維持したいならそうした食品を活用するとよいでしょう。おなかの健康だけでなく、骨の健康のためにも、大麦で腸活を始めてみませんか?

*1 厚生労働省, 健康日本21(第三次)の推進のための説明資料, 2023.
*2 厚生労働省, 日本人の食事摂取基準(2020年版), 2019.
*3 厚生労働省, 令和4年国民健康・栄養調査結果の概要, 2024.
*4 Takimoto T, et al.: Biosci Microbiota Food Health 2018; 37: 87–96.
*5 Tousen Y, et al.: Nutrients 2019; 11: 297.
*6 Younes H, et al.: Br J Nutr. 2001; 86: 479-485.