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“新やせ菌”として注目のブラウティア菌を増やす食べ物とは?


近年、メディアで見かけることが増えている「デブ菌」や「やせ菌」というワード。日本人を対象とした最近の研究から、肥満の人にはブラウティア菌という腸内細菌が少ないことが報告され*1、ブラウティア菌が新しいやせ菌として注目を集めています。今回は、ブラウティア菌の働きやブラウティア菌を増やすのに効果的な食べ物などについて詳しく解説します。

日本人に特有のやせ菌「ブラウティア菌」とは

これまで、「太りやすさ」という体質はブラックボックスでしたが、個人が持っている腸内細菌の種類が太りやすさに関係することが研究で明らかになってきました。こうした研究を踏まえ、肥満の人が多く持っている腸内細菌は「デブ菌」、やせ型の人が多く持っている腸内細菌は「やせ菌」と呼ばれるようになっています。

やせ菌として最もよく知られているのは、アッカーマンシア菌(Akkermansia muciniphila)という細菌です。20年前に発見されて以来、様々な研究によって腸の健康に有用であることが明らかにされ、肥満の予防にも役立つ可能性があると期待されています*2。しかし、食習慣の違いなどから日本人では欧米人とは異なる特有の腸内細菌叢(腸内フローラ)を持つことが知られており*3、日本人に特有のやせ菌が存在する可能性があります。

そこで、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の研究グループが約400人の日本人を対象に腸内フローラを解析し、日本人に特有のやせ菌の存在の探索を行いました。その結果、肥満や2型糖尿病でない人ではブラウティア菌(Blautia wexlerae)の割合が高いことが明らかになり*1、ブラウティア菌が新たなやせ菌として注目されるようになりました。

ブラウティア菌はどんな働きをする腸内細菌?

健康で太っていない人の腸内に多く生息するブラウティア菌には、どんな作用があるのでしょうか?実際に、高脂肪のエサを与えられたマウスにブラウティア菌を経口摂取させたところ、ブラウティア菌を摂取しなかったマウスと比べて内臓脂肪の蓄積や体重増加が抑制され、血糖値の上昇が抑えられることが分かりました*1。

乳酸菌やビフィズス菌などの有用菌は、発酵によって短鎖脂肪酸(乳酸や酢酸など)やペプチド、ビタミンなどを作り出すことが知られています。一方、ブラウティア菌はオルニチンやアセチルコリン、S-アデノシルメチオニンなどの脂肪蓄積抑制効果のあるユニークなアミノ酸代謝物を産生することが分かっています*1,4。ブラウティア菌が肥満や糖尿病を抑制する作用を発揮する理由は、これらの代謝産物を産生するからだと考えられます。

また、マウスにブラウティア菌を経口摂取させたところ、腸内フローラが改善し、便中の短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)が増加することも確認されています*1,4。ブラウティア菌自体はプロピオン酸や酪酸をわずかしか産生しないにもかかわらずこれらの短鎖脂肪酸が増加したことから、ブラウティア菌は酪酸菌などの他の有用菌に働きかけることで腸内環境を改善している可能性があります。

大麦はブラウティア菌を増やす食べ物としておすすめ!

ブラウティア菌はほとんどの人の腸内に生息していますが、ブラウティア菌の割合が腸内フローラの6%以上になると肥満や2型糖尿病のリスクが下がることから*1、ダイエットや健康維持のためにはブラウティア菌を増やす食事を心がけることが大切です。

ブラウティア菌を増やすには、エサとなる食物繊維を豊富に含む食べ物を積極的に摂るのがよいでしょう。特におすすめなのが、β-グルカンという水溶性食物繊維を豊富に含む大麦です。日本人19人を対象にした研究によると、大麦を約3割配合した雑穀ごはんを4週間摂取したところ、腸内のブラウティア菌が増加したと報告されています*5。また、日本人94人を対象とした別の研究では、普段から大麦を多く摂取している人ではブラウティア菌の割合が高い腸内フローラを持っている人が多いことが示唆されています*6。

大麦を摂るなら、いつものごはんを麦ごはんに変えるところから始めてみましょう。大麦と白米を混ぜて炊くだけで手軽に作れるので、今日からすぐに食事に取り入れられます。麦ごはんの炊き方は「じつはとっても簡単! 麦ごはんの炊き方」で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

*1 Hosomi K, et al.: Nat Commun. 2022; 13: 4477.
*2 Liu E, et al.: Nutrients. 2024; 16: 3440.
*3 Nishijima S, et al.: DNA Res. 2016; 23: 125–133.
*4 細見晃司ら: 生化学 2023; 95: 450-456.
*5 Goto Y, et al.: Nutrients. 2022; 14: 3468.
*6 Matsuoka T, et al.: BMC Nutr. 2022; 8: 23.