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麦粒の黒い線に秘められた人々の思いとは?


あの黒い線は、水分や養分の通り道だった

米とは異なり、大麦には一粒一粒に黒い縦線があります。その様子が、力士のまわしのように見えることから、「ふんどし」などといわれることもあるようですが、専門的には「黒条線(こくじょうせん)」といいます。この黒条線は、種子が形成されるときの水分や養分の通り道になっていて、大麦が育つためにはなくてはならないもの。とても大切な役割を担っています。しかし、黒条線自体は「腹溝(ふっこう)」という大麦のくぼみに残った外皮で、栄養があるわけではありません。ちなみに、黒条線は見た目が気候条件などで変わり、豊満で粒の張りのいい大麦だと、黒条線もきれいな線が1本スッと延びているそうです。

米と違和感なく食べられるように加工された白い大麦

茶碗に盛られたごはんを見たときに、黒条線が目に入れば一目で「麦ごはん」とわかります。黒条線は、大麦の象徴にもなっていますが、あえて黒条線を取り除いた加工品もあります。黒条線に沿って大麦の粒を縦にカットし、削ることでお米のような白い大麦にした「純麦(じゅんむぎ)」や、米と一緒に炊いても米の上面に浮き上がらないよう米と同じ比重と形状に整えた「米粒麦(こめつぶむぎ)」などです。

なぜ、このような商品ができたのでしょうか。大麦は、戦後の日本では貴重だった米を補充する大事な主食でした。大麦が入っていない米だけのごはんは「銀シャリ」などといってありがたがられていたのです。しかし、大麦には米を上回る栄養価があります。そこで、米と混ぜて炊いても違和感なく食べられるようにしたいということから、黒条線を取り除く製法が開発されたのです。現在でもこの黒条線については研究などが行われていて、より浅くて細い黒条線の大麦の育成などが検討されているようです。